第510話 東京のオフィス空室率低下の要因とは?オフィス需要活発化に注目
株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、都内ホテルのラウンジで投資談義を行っています。
神様:東京のオフィスビルの空室率が低下しています。2026年7月の東京都心5区のオフィス・ビル市況(三鬼商事調べ)によると、平均空室率が1.95%となり、4カ月連続で低下しました。これは2020年5月以来の低水準となります。

T:2020年5月と言えば、コロナ禍が始まった頃ですね。新型コロナウイルス感染症専門家会議や厚労省が「新しい生活様式」を提言したのが2020年5月4日でした。その時の水準に戻ったということですか。
神様:そうなりますね。平均賃料も上がっています。2026年7月は前年同月比でプラス11.4%となる23,287円/坪となり、27カ月連続で上昇しました。
T:近年は世界的に、従業員にオフィスへの出社を求める「オフィス回帰」が見られます。東京都心のオフィスビルの空室率が低いのもこの流れの一環でしょうか?
神様:おっしゃる通りです。オフィス回帰の要因としては、社員同士のコミュニケーション不足やマネジメントや人材育成の点での課題が挙げられています。一方で、東京のオフィス空室率の低下は、オフィス回帰だけが要因ではなさそうです。
T:どういうことでしょうか?
神様:例えば、人手不足の深刻化です。人手不足により、企業は人材の確保に力を入れざるを得ません。そのためには、働きやすいオフィス環境を整えることが重要です。オフィス環境の整備需要が高まっています。
T:なるほど。求職者の売り手市場である現在、働く側にとっては、より仕事がしやすい環境を選ぶのは容易に想像できますね。
神様:また、日本のデジタル化の遅れも指摘されています。総務省の令和7年版情報通信白書によると、日本と米国、ドイツ、中国を比較してテレワークやデジタル化の取り組み状況を比較し、日本の取り組みの遅れを明らかにしています。AIの活用についても同様のことが言えるでしょう。つまり、日本では十分なデジタル化やAIの活用による省力化・省人化がまだまだ進んでいないのです。
T:その結果、海外に比べるとより人がオフィスに集まって仕事をする必要がある、ということですか?何とも喜べない事情ですね。
神様:オフィス需要という点で見れば大きなチャンスでもあります。事業会社によるオフィス投資が活発化し、今後竣工予定の大型ビルも契約が順調に進んでいます。
T:確かにそうですね。
神様:賃料交渉においても貸し手優位となり、東京以外の都市部でも賃料が上昇傾向にあります。さらに、建築現場の人手不足による工事の遅れ、建築コストの上昇などがあり、供給計画は全体的に後ろ倒しの傾向です。今後のオフィス供給は限定的になるとみられ、当面は引き締まった需給環境が続きそうです。
T:つまり、空室率は低下傾向が続き、賃料も上昇しやすい状況にあるわけですね。
神様:インフレの定着を背景に、テナント企業は賃料増加に対して理解を示す傾向にあります。オフィス需要が活発化し、オフィス市況が改善することで、競争力の高いオフィス資産を有する大手不動産デベロッパーやREIT(不動産投資信託)の収益拡大を後押しするとみられます。
T:ところで、REITとは何でしょうか?
神様:REIT(リート 不動産投資信託)とは、英語の「Real Estate Investment Trust」の略です。投資家から集めた資金でオフィスビルや商業施設などの不動産を保有し、そこから生じる賃貸収入や売却益を投資家に分配する投資信託のことを言います。当然ながら、オフィス需要が活発化し賃料が上がっていくほど、賃貸収入や売却益が上がります。東京だけでなく、大阪、名古屋も含めた三大都市のビジネス地区のオフィス平均賃料も上昇傾向にあります。オフィス不動産の関連企業にとっては大きなチャンスとなるでしょう。

T:なるほど。人手不足やAI普及の遅れなどはネガティブな面でもありますが、別の視点から見ると大きなチャンスでもあるわけですね。オフィス需要の推移に今後も注目です。
(この項終わり。次回9/2掲載予定)
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