第512話 過去最高売上を記録し続ける“クレーンゲーム“ 背景にある変化とは?
株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、海の見えるカフェでコーヒーを飲みながら投資談義を行っています。
神様:Tさん、2年前にゲームセンター市場、特にクレーンゲームについてお話したこと(第390話 ゲームセンター市場拡大をけん引する”人気ゲーム”とは?)を覚えていますか?
T:確か、ゲームセンター市場がコロナ禍から回復の兆しを見せており、その中でもクレーンゲームの売上が2021年度に過去最高を記録した、というお話でしたね。
神様:今日は再び、ゲームセンター市場について見てみましょう。あの時から面白い変化が起こっています。
T:どんな変化でしょうか?よろしくお願いします。
神様:まずはおさらいです。一般的にクレーンゲームなど景品を獲得することを目的としたゲームのことを「プライズゲーム」と言います。日本アミューズメント産業協会によれば、ゲームセンター市場は引き続き回復基調にあります。そして、プライズゲーム市場の拡大がその回復を押し上げています。
T:市場の動向としては2022年と同じ傾向が続いているということですね。
神様:プライズゲーム市場で大部分を占めるのがクレーンゲームです。日本アミューズメント産業協会が公表しているクレーンゲームの売上の推移を見てみましょう。2021年度以降、クレーンゲームの売上は過去最高を記録し続けています。そして、2024年度には4,177億円と、初めて4,000億円を超えました。

T:グラフを見ると、ゲームセンター全体の売上の中でプライズゲームが占める割合も右肩上がりで上昇し、2024年度には約70%まで迫っています。まるで巨大なクレーンゲームブームが到来しているかのような盛り上がりですね。
神様:おっしゃる通りです。クレーンゲームの人気の背景には、景品を試行錯誤して獲得する体験やクレーンゲームでしか獲得できない限定品に魅力を感じている人が増加していることがあります。そして、もう一つ注目する点はゲームセンターの店舗数です。少子化やスマートフォンの普及などにより、ゲームセンターの店舗数は2022年度まで減少の一途をたどっていました。ところが、2023年度に減少が止まり、2024年度には店舗数が急激に増えています。

T:意外ですね。これもクレーンゲームの影響でしょうか?
神様:昔ながらのゲームセンターが少なくなる一方で、ショッピングセンターなどの商業施設にはクレーンゲームを多数取り扱う大型店などの出店が相次いでいます。クレーンゲームの専門店も賑わっており、ターゲット客も男性からファミリー層へと拡大しています。
T:確か2022年のお話では景品がより豪華で魅力的になり、アニメキャラクターなどのフィギュアや非売品で希少性の高い景品が登場し、人気が高まったのでしたね。
神様:2022年に「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」の解釈運営基準が改正され、景品の小売価格の上限が800円から1,000円に緩和されました。この施策が市場拡大を後押しし、ファンによる「推し活」だけでなく、インバウンド需要も取り込みました。
T:しかし、ファミリー層までクレーンゲームに夢中になる要因は何でしょうか?
神様:最後に注目する点は、景品の変化です。近年では、景品として食品や日用品の存在感が高まっています。レトルトカレーやカップラーメン、トイレットペーパーや洗剤など、日常生活で使用する実用品が景品として登場しています。インフレ、物価の高騰が家計を圧迫する中、クレーンゲームにも実利を求められるようになりました。
T:まるでコンビニやスーパーマーケットのような品揃えですね。ゲームの中に実利が、実利の中にエンタメ要素が加わることで、新たなファミリー層の顧客獲得につながっているのですね。それにしても、実利だけを求めるなら安く良い品を購入できる店に行きますが、お金をかけて試行錯誤して日用品を獲得するとは、われわれ現代人のエンタメに求める複雑な心境を垣間見るようです。
神様:もちろん、裏にはクレーンゲームの関連企業のたゆまぬ努力があってこその、ここまでの発展です。クレーンゲームでしか獲得できない限定食品の開発など、今後の動向にも注目です。クレーンゲーム市場のさらなる拡大に期待しましょう。
(この項終わり。次回9/16掲載予定)
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