第519話 「ピンチはチャンス」”中東依存”原油対策でニーズ高まる企業とは?
株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、都内ホテルのラウンジで投資談義を行っています。
神様:ここ最近、再び中東情勢の緊張が高まっています。原油価格は7月から上昇に転じ、株式市場も外部要因に不透明感が漂っている状況です。一方で、9月の日銀短観では製造業、非製造業ともに業況判断DIは比較的高い水準を維持しています。企業業績の上方修正への期待が高まり、好業績が評価されることで年末に向けての株高期待も高まっていくでしょう。
T:中東情勢はこの状況がさらに続くと今後の株価への影響も気になります。報道によると、政府が今年3月から行っているガソリン価格に対する支援も12月以降は徐々に縮小していく方針のようです。消費への影響も気になるところです。
神様:2026年2月28日に開始された米国とイスラエルによるイラン攻撃から8カ月、そしてイランがホルムズ海峡を閉鎖してから7カ月が経過しました。ホルムズ海峡の封鎖はイランへの攻撃に対する報復措置ですが、これまで原油やナフサの大半をこの地域から輸入してきた日本にとって深刻な影響を受ける結果となりました。
T:日本関係のタンカーや貨物船がペルシャ湾内に長期間閉じ込められ、確か封鎖直後には「日本は6月に詰む」とも言われていましたね。その後はどうなったのでしょうか?
神様:まず、日本には石油の国家備蓄や民間備蓄があります。それらの払い出しもあり、実際に6月に詰むことはありませんでした。
T:石油備蓄はかなり減ったのでしょうか?
神様:資源エネルギー庁の公表によれば、2026年10月時点で国家備蓄は103日分、民間備蓄は96日分あります。他に産油国共同備蓄が4日分あり、合計で204日分の備蓄がある状況です。昨年10月の石油備蓄が253日分でしたから、およそ50日分程度を使ったことになります。

T:6月から5カ月経っていますが、50日分の放出で済んでいるのですか。石油獲得には他にどんな手段があるのでしょうか?
神様:原油の調達先を多角化しています。これまで原油の輸入はホルムズ海峡経由のサウジアラビア産などがほとんどでしたが、現在は米国産の輸入増でカバーしています。

T:それなら石油備蓄が枯渇することもなさそう、と考えて良いですか?
神様:ただし、課題もあります。これまでの中東依存の弱点を補うためには、輸送経路を変更した場合の輸送費増加分の支援やパイプライン建設など、エネルギー需給構造を強靱化して調達安定性を確保することが大切です。政府は10月13日、原油等調達多角化法案などの資源確保関連3法を閣議決定しました。今後国会の中で審議されることとなります。
T:投資の観点からは、このあたりの今後の変化は注目ですね。
神様:さらに言えば、サウジアラビアの原油は重質油ですが、米国産の原油は軽質油という“油の質の違い”があります。そのため、それぞれの原油から精製されるガソリンやナフサなどの割合が異なります。国内の製油施設が米国産の新しい原油に本格的に対応するには設備改修が必要になります。
T:ということは、プラントの改修ニーズが発生するのですね。
神様:すでに関連企業への受注が増加しているようです。
T:なるほど。
神様:今後は国家備蓄も放出から再備蓄のステージへ移行するでしょう。一方で、備蓄を払い出したタンクへの再備蓄では「継ぎ足し」ができません。そのため、タンクを一度空にし、タンクの底に固まった残骸(スラッジ)を油で洗い流す必要があります。これを「COW(原油洗浄)工法」と呼びますが、設備改修ニーズと同様、対応できる企業の受注も高まっているようです。
T:まさに「ピンチはチャンス」。原油対策に伴ってニーズが高まる企業があるのは興味深いです。日本のエネルギー供給の安定化に向けて、原油対策などのエネルギー関連企業への期待は高まりそうですね。今後の活躍に注目です。
(この項終わり。次回11/11掲載予定)
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