株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、都内ホテルのラウンジで投資談義を行っています。

神様：今日は情報セキュリティについて話しましょう。近年はサイバー犯罪が増加の一途をたどっています。警察庁によると、2000年のサイバー犯罪の検挙総数は913件でしたが、2024年には13,164件まで増加しました。そして2025年は、ランサムウェアによるサイバー攻撃が社会に大きな影響を与えました。

T：確かに、9月29日にはアサヒグループホールディングス、 10月19日にはアスクルが、それぞれ自社システムがランサムウェアに感染したことを公表しました。テレビなどでも大きく報道されていましたね。どちらの事件も衝撃的でした。

神様：ランサムウェアとは何か、ご存知ですか？ランサムウェアとはマルウェア（不正プログラム）の一種です。パソコンやサーバーなど、システムがランサムウェアに感染すると、システムに保存されているデータは暗号化されて使用できない状態になります。その上で犯人から「データの暗号化を解除してほしければ身代金を支払え」と対価を要求してくるのが特徴です。さらに、最近ではシステムの中の機密情報を窃取され「身代金を支払わなければ情報を公開する」と脅迫するケースが目立っています。

T：一度暗号化されてしまうと自分たちでは元に戻すのが難しいと聞きます。機密情報の流出も企業にとっては致命的です。報道などを見ていると大企業から中小企業までさまざまな企業が被害に遭っているようです。こういった攻撃が増えているのでしょうか？

神様：ランサムウェアによる攻撃は増えています。特に最近は、企業のVPN機器などネットワーク機器の脆弱性を狙った攻撃が目立っています。人を騙してIDやパスワードなどを窃取しようとする「フィッシング」の手口も高度化しており、見破りにくくなっています。さらに、自社ではしっかりとしたセキュリティを備えていても、いわゆるサプライチェーン上で関係する企業において情報セキュリティ対策が取られていなければ、全体のセキュリティレベルも落ちてしまい、攻撃を受けることもあります。情報セキュリティ対策に終わりはありません。自社組織、そして、関連する企業まで含めて日々対策を重ねていく地道な努力が必要とされます。

T：裏を返せばそれだけサイバー空間が身近なものになっているということでもありますね。サイバー空間は国内外の垣根も低いですから、世界を相手に守らなければいけませんね。

神様：おっしゃる通りです。近年では個人による愉快犯的な動機から組織的な犯罪へと移行し、金銭の被害額も大きくなっています。企業活動への影響も大きくなり、今後はより情報セキュリティ対策強化しなければいけないでしょう。

T：ということは、投資の観点から見れば、情報セキュリティ市場はますます重要になってくると言えますね。

神様：その通りです。日本の情報セキュリティ市場はまさに拡大傾向にあります。日本ネットワークセキュリティ協会（JNSA）によれば、2022年度のセキュリティ市場の推定値は1兆4,628億円でしたが、2025年度には1兆9,458億円に達すると予測されています。今後の情報セキュリティ市場では、ウイルス対策ソフトやファイアウォール製品などのツール市場の成長が市場全体をけん引し、そこに付随する形でコンサルティングやセキュリティ監視などのサービス市場が伸びると予測しています。

T：多くの企業では現状のセキュリティ対策は万全ではないでしょうし、攻撃が高度化しているのであれば、それを防げるだけのより高度なツールが必要になります。さらに、それらツールをしっかり活かすためにコンサルや運用監視サービスなども併せて活用していければいいですよね。

神様：最近はリモートワークとオフィスワークをあわせたハイブリッドワークを採用している企業が多くなりました。企業のあり方や考え方も多様化し、それぞれの企業に合わせたツールを用いることが重要視されています。また、生成AIなどの新しい技術による高度な機能を搭載したツールやサービスも登場しています。今後はAIもセキュリティ市場で存在感を発揮することとなるでしょう。

T：サイバー攻撃が高度化・複雑化する中で、企業のシステム担当者だけでは対応できなくなっていくことも起こりそうです。セキュリティ専門家の力を借り、AIの力を借りてどのようにセキュリティ事故にあわないように、または被害を最小限にするのか、とても興味があります。

神様：今年の教訓を生かして、日本企業の情報セキュリティレベルを上げるべく各企業で努力していかなければいけません。サイバーセキュリティの関連企業にも大いに期待していきましょう。

（この項終わり。次回1/14掲載予定）