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第478話 ”電力需要増”見据え再稼働へ前進 見直されつつある原子力発電

2025.12.17

株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、都内のカフェでコーヒーを飲みながら投資談義を行っています。


神様:北海道の鈴木知事は12月10日、泊原子力発電所3号機の再稼働に同意することを表明しました。これにより北海道電力が目指す2027年の早い時期での原発再稼働へ向けて大きく前進したことになります。また、11月21には新潟県の花角知事が柏崎刈羽原発6号機の再稼働を容認する考えを示しています。原子力発電は今、稼働へ向けて見直されつつあると言えるでしょう。

T:12月8日には青森県東方沖を震源とする最大震度6強の地震が発生し、その直後の表明でもあることから、報道でも大きな話題となっていましたね。

神様:そうですね。今回の地震による原発への異常は確認されていませんが、今後も警戒や備えは欠かせないでしょう。

T:しかし、地震大国日本において、今後も巨大地震への備えが求められる中、原子力発電の再稼働が必要とされる理由は何でしょうか?

神様:それは電力需要の増加です。これまで、今後の生成AIの需要や半導体生産工場への需要の増加などにより、電力需要が増加する見込みであることを話してきましたね。原子力発電は化石燃料による発電に比べて温室効果ガスの発生を抑え、安定的に電力を供給する手段として最適です。資源の少ない日本において、化石燃料によらない発電は大きな魅力でもあります。

T:日本にとって電力供給の最も現実的な手段であるということですね。

神様:北海道の泊原発の再稼働も、北海道におけるデータセンターや半導体生産工場などの需要も見据え、電気の安定供給による道内経済の活性化が狙いです。原発が稼働することで地域住民の電気料金の値下げにもつながるでしょう。もちろん、安全な稼働が大前提です。3.11の東日本大震災による福島第一原発の事故を受け、日本の原子力発電は全て停止しました。その後、原子力規制委員会は事故への反省を踏まえて新しい規制基準を作成し、運用を行っています。停止した原子力発電所は新規制基準への適合性を判断する審査を受け、合格すれば再稼働が認められます。

T:今回報道されている泊原子力発電所3号機や柏崎刈羽原発6号機は、その新しい規制基準には適合しているのですよね?

神様:どちらもすでに審査を受け、合格しています。あとは、地元の同意が得られれば再稼働へ向けて前進する、という段階です。

T:他にも審査に合格している原発はあるのですか?

神様:茨城県東海村にある東海第二原発も合格しています。その後、首長が容認を表明しているものの、一部工事に不備が見つかるなど課題もあるようです。いずれにしても、原発の見直しは今後より進んでいくことと思われます。

T:基準を満たしていても、想定を超えた災害が起こればまた大きな事故になりかねません。今後も絶え間ない安全性への追求を行ってほしいですね。

神様:ご存知の通り、生成AIの学習に欠かせないデータセンターや半導体工場の増設により、今後は電力需要の増加が見込まれます。予測では2034年度までに715万kW増加する見込みです。独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構によれば、データセンターの1拠点あたりの消費電力は約50MW程度です。これは一般家庭の1万~1万6千世帯分に相当する試算です。

T:データセンター1拠点で、一般家庭1万6千世帯分ですか、すごい電力消費量ですね。

神様:だからこそ、安定した電力供給方法として原子力発電が必要とされているのです。原子力発電の発電割合を見ると、2013年度の約0.9%から2024年度には10.5%まで増加しています。政府のエネルギー基本計画では、2040年に原子力発電の比率を20%程度とすることを目標としています。

T:2050年カーボンニュートラルを実現するためにも、再生可能エネルギーとともに原子力発電が大きな役割を担うことになるわけですね。

神様:その通りです。今後は次世代原発である小型モジュール炉などの新技術の開発も進み、原子力発電の拡大に貢献するでしょう。今後の動向に注目しましょう。

(この項終わり。次回12/24掲載予定)

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