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第252話 景気“夜明け”はいつ?設備投資で見る景気の先行き

2021.05.12

株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、リモートで投資談義を行っています。


神様:Tさん、昨年の今ごろはどんな話をしていたか覚えていますか?

T:昨年の3月から5月にかけては、まさにウイルスとの長い戦いの始まりでした。日経平均株価も2万円を切るところまで下がり、経済活動の停滞や企業業績への影響が気になる中、私たちは巣ごもり消費など、新型コロナウイルスによるライフスタイルの変化( 第203話 新型コロナウイルス拡大 注目される「巣ごもり消費」 )に注目していました。

神様:その後、世界でワクチン接種が始まり、経済活動も徐々に再開されました。日経平均も今年の2月には3万円を超えるところまで上昇しました。今、東京や大阪などでは3度目の緊急事態宣言が発令されていますが、”夜明け前が一番暗い”ということわざもあります。しっかり感染症対策をして、乗り越えていきましょう。

T:来年の5月は、旅行に出かけたいですね!

神様:ところで5月は、相場格言では「セルインメイ(Sell in May)」と言われます。英語を直訳して「5月に株を売りなさい」という意味ですが、これは株価が5月にかけて上昇し、その後下落基調に転じる米国株の経験則に由来するものです。国内では、日経平均株価の過去10年間で見ると、5月は年末の株高に向けた踊り場であり、中長期の成長が期待できる企業への投資機会と言えるでしょう。

T:なるほど。5月は”買いの機会”ということですね。決算発表を受けて好業績銘柄に注目が集まる中、年末に向けての注目銘柄を今一度確認したいと思います。

神様:さて、景気の先行きを見る上で重要視される指標のひとつに、日本工作機械工業会が公表する「工作機械受注」があります。企業の設備投資を見る指標ですが、世界景気の代表的な指標であるOECD景気先行指数とも連動性が高く、よく見ておくと良いでしょう。

T:先日発表された2021年3月分の受注速報によると、受注総額は前年同月比で65.1%増となる1,278億円でした。

神様:好不況の目安とされているのは受注額1,000億円です。2021年2月、3月と2か月連続で1,000億円を超えました。当面はコロナ禍で落ち込んだ前年からの回復が続くと見込まれます。今後も1,000億円の水準を維持するかが景気動向を見極める焦点となるでしょう。

T:4月27日に日銀が公表した「経済・物価情勢の展望」では、国内の景気は「内外における新型コロナウイルス感染症の影響から引き続き厳しい状態にあるが、基調としては持ち直している」との表現で、現状維持の判断です。依然として、感染症の影響による不透明感が強い中、企業の設備投資の回復を維持したいところです。

神様:現在、回復をけん引しているのは中国です。2021年3月の中国向け受注は前年同月比で3.3倍の374億円となり、3年4か月ぶりの高水準となりました。一足早くコロナ禍からの離脱を受けた自動車の増産や、インフラ投資の活発化などを背景に、投資需要が高まっているようですね。北米や欧州、日本などの地域へも回復が広がっています。

T:今後も、ワクチンの接種が拡大し、経済正常化が進むことで設備投資と景気の回復が続くことを期待したいですね。

神様:日本の企業は工作機械において高い競争力を持っています。今年度は事業環境の改善により業績回復が見込まれますし、長期的に見ても、自動車やIT分野向けに成長が続くでしょう。”夜明け”後が楽しみな業界であると思いますよ。

(この項終わり。次回5/19「少子化にコロナ禍…試される学習塾業界の行方」掲載予定)

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