第475話 “キャッシュレス万博“でも注目 存在感増すコード決済
株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、海の見えるカフェでコーヒーを飲みながら投資談義を行っています。
神様:10月13日、184日間にわたって開催された大阪・関西万博が終了しました。この期間で実に累計約2,900万人が訪れました。
T:大成功ですね。終わってしまったことが残念です。
神様:万博では国際博覧会として初の試みとなる「全面的キャッシュレス」が導入され、大きな話題となりました。万博を運営する公益社団法人2025年日本国際博覧会協会は11月17日、「大阪・関西万博 全面的キャッシュレス決済運用の効果検証 報告書」を発表しました。184日間、現金を一切取り扱わない運営によりどんな効果があったのか、アンケート調査や決済データの分析によって明らかにしています。
T:面白そうな報告書ですね。
神様:詳しくは報告書を確認していただきたいですが、会場内の消費者や店舗の反応はおおむね好評だったようです。決済利用者の9割以上が「現金よりも効率的・便利」と感じ、会場での体験もより快適になるなど、来場者に高い満足度をもたらしたことが明らかになっています。
T:キャッシュレス決済の試みでも、大成功を収めましたね。
神様:日本は海外諸国に比べればキャッシュレス決済の比率はまだまだ低い状況です。経済産業省によれば、2024年の日本のキャッシュレス決済比率は42.8%で政府の目標を前倒しで達成していますが、他国ではキャッシュレス決済比率が50%を超えている国も多く、日本の比率は高いとは言えません。政府は将来的には世界最高水準のキャッシュレス決済比率である80%を目指す目標を掲げています。

T:80%を目指すに当たってポイントは何でしょうか?
神様:ひとつ注目なのは、コード決済の成長でしょう。万博でもコード決済が大きく注目されました。報告書によれば、万博会場での全体の決済手段別の傾向を見ると、金額ベースの比率ではクレジットカードが5割弱、次いでコード決済が3割強、電子マネーが2割弱との結果でした。クレジットカードが最も多く支払いに使われたのは、2024年の市場での決済手段の分布と同じです。一方でコード決済では、市場での割合に比べて万博会場で大きく伸びたことが分かっています。
T:コード決済とは、QRコードなどをスマホアプリで読み込んで支払う決済手段のことですね?
神様:はい。コード決済はここ数年で大きく成長しています。キャッシュレス推進協議会によると、2023年のキャッシュレス決済の件数は全体で342.5億件でしたが、そのうちコード決済は93.6億件でした。全体の約27%を占め、クレジットカードに次ぐ決済手段です。決済額で見ると、2024年のコード決済額は13.5兆円であり、キャッシュレス決済に占める割合は9.6%でした。2018年時点では0.2%でしたから、その存在感は大きく増しています。

T:万博でも存在感を見せたコード決済ですが、なぜ利用者が伸びたのでしょうか?
神様:要因のひとつは導入の手軽さにあります。クレジットカードに比べて、コード決済や電子マネーは単価の低い買い物でよく利用されています。電子マネーは専用の読み取り機が必要ですが、コード決済はQRコードが書かれたシールをスマホで読み取るだけです。
T:アプリの機能も充実していますね。ポイント獲得だけでなく、利用者間で送金もできますし、銀行やショップなどとのアプリ内連携も豊富です。
神様:スマホさえあれば、財布を持たずに外出でき、買い物できるようになったのは、コード決済のおかげでしょう。
T:そう言えば、QRコード決済の統一規格があるらしいですね。
神様:よくご存知ですね。キャッシュレス推進協議会が策定した「JPQR」は複数社ある決済QRコードを1枚のQRコードにまとめることが可能です。店舗側は決済サービスごとにQRコードを設置する必要がなく、月額料金も発生しません。利用者は加盟店以外で利用できないデメリットが解消されます。今後もコード決済の利便性が増すことで、利用者増が期待されます。
T:キャッシュレス決済比率80%を目指して、コード決済の成長に注目ですね。
(この項終わり。次回12/3掲載予定)
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