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第473話 高市新首相も注目 エネルギー安全保障の要「ペロブスカイト太陽電池」

2025.11.12

株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、都内ホテルのラウンジで投資談義を行っています。


T:10月24日、高市早苗新首相は第219回国会で所信表明演説を行いました。演説の中で首相は、「強い経済」をつくるために「責任ある積極財政」の考え方の下、戦略的に財政出動を行う、と述べています。物価高にあえぐ国民の期待に応えられるか、これから注目ですね。

神様:おっしゃる通りです。国民が直面する物価高対策への対応や、経営難が深刻化する医療機関や介護施設への支援など、今後の対応が注目されます。その他でも注目する点が多くありますが、その一つとしてエネルギー安全保障があるでしょう。国民生活や国内産業の持続にはエネルギーの安定的で安価な供給を実現することが不可欠です。演説では、原子力やペロブスカイト太陽電池を始めとする国産エネルギーの重要性に触れられています。

T:ペロブスカイト太陽電池は、2050年カーボンニュートラルに向けた日本の再生可能エネルギー拡大の切り札となる次世代太陽電池ですね。

神様:その通りです。ペロブスカイト太陽電池は、薄くて軽い、曲げられる太陽電池です。従来の太陽電池はシリコンでできていますが、ペロブスカイト太陽電池はヨウ素を主要な材料としています。実は、日本はヨウ素の生産で世界シェア3割を占める世界第2位のヨウ素大国です。

T:ヨウ素の生産国第1位はどこですか?

神様:チリです。チリは実に6割以上のシェアを占めています。その他の国では、米国が1割弱のシェアです。

T:日本とチリでほとんどのヨウ素を生産しているのですね。知りませんでした。

神様:ペロブスカイト太陽電池の開発においては、日本はサプライチェーンを他国に頼らず確保することができ、経済安全保障の面での利点があると言えるでしょう。そもそも、ペロブスカイト太陽電池は日本発の技術でもあります。

T:なるほど。ここはチャンスを生かして太陽光発電技術で世界をリードしたいところですね。ヨウ素の生産に強い日本企業にとっても追い風です。

神様:経済産業省は2026年度から、化石燃料の利用が多い一部の店舗や工場に太陽光発電設備の設置を義務化する方針を発表しています。全国で約12,000の事業者が対象になる見込みで、従来型の太陽電池を設置できない場所にはペロブスカイト太陽電池の設置が進むことが期待されています。これが次世代太陽電池の普及の契機となるかもしれません。

T:そう言えば、最近は報道などで山林を切り開いて大規模な太陽光発電施設を設置することが問題となっている事例もありますが、再生可能エネルギーをより多く生産するためには、設置場所も考えていかなければいけません。

神様:重さのある従来のシリコン系の太陽電池は設置場所が限られるというデメリットがあります。日本の太陽光設備の平地面積当たり導入量は諸外国と比較しても突出して多く、設置場所の確保が大きな課題となっています。ペロブスカイト太陽電池は外壁や窓面などの既存建物にも設置することができるため、都心部での再エネの地産地消も期待されているのです。

T:ビルの外壁が太陽光発電を行うようになるのですか?

神様:はい。ペロブスカイト太陽電池の種類としては、フィルム型やガラス型、さらに複数の層を組み合わせたタンデム型などがあります。それぞれ建物の材料に使用するなど、新たな導入の可能性を秘めており、用途に合わせた活用が期待されます。

T:ガラスですか。近い将来、ガラスが電力を発電する時代が来るのですね。

神様:しかし、一方で中国や欧州などによる開発競争も激化しています。実用化、量産に向けて今後さらに厳しい競争となるでしょう。資源エネルギー庁によれば、2023年度の発電電力量に占める太陽光発電の割合は9.8%でした。2040年度エネルギー見通しでは、複数シナリオを用いた幅として23~29%が提示されています。太陽光発電は、今後重要性を増す再生可能エネルギーをけん引する存在です。日本企業による実用化技術開発に期待していきましょう。

(この項終わり。次回11/19掲載予定)

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