第476話 2030年農業人口は3分の1以下に?急げ「農業の効率化」
株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、都内ホテルのラウンジで投資談義を行っています。
T:11月21日、政府は新たな総合経済対策を閣議決定しました。減税・特別会計を合わせて21.3兆円程度となる大規模な政策です。
神様:国民の生活を支援する物価高対策では、一般会計と減税を合わせて11.6兆円規模。内容としてはガソリンの暫定税率の廃止、電気・ガス代の支援、所得税・年収の壁の見直し、さらに重点支援地方交付金の拡充や子育て世代への支援などがあります。重点支援地方交付金の拡充では、1世帯当たり平均1万円程度の支援に加えて食料価格高騰を踏まえ、1人3,000円相当を別枠で特例加算分として措置するとしています。
T:いよいよ、物価高対策としての支援が行われますね。報道では「お米券」を配布する自治体もあるようで、最近はスーパーの米の価格も非常に高くなりました。そもそも、なぜこんなに米の価格が高くなったのでしょうか?
神様:農林水産省では、毎年秋に翌年の主食用米などの需給見通しを作成しています。平成26年以降、米の需要は毎年10万トン程度減少しており、コロナ禍以降も変わりませんでした。ところが、令和5年以降で需要は増加に転じます。農林水産省では令和4年秋・令和5年秋の需要見通しでは引き続きマイナストレンドを継続し、実際の需要とギャップが生じてしまったのです。
T:なぜ、米の需要は増加に転じたのでしょうか?
神様:農林水産省によれば、高温障害等により精米歩留まりが悪かったこと、インバウンド需要、家計購入量の増加などひとり当たり消費量の増加を要因として挙げています。
T:精米歩留まりとは何でしょう?
神様:お米は玄米から精米すると、白米の量が減りますが、どれだけ白米ができたかを表す指標のことを精米歩留まりと呼んでいます。猛暑などの高温が続くと、この精米歩留まりが悪くなり、白米の量が低下することがあるのです。
T:なるほど。こんなところにも猛暑の影響があったのですね。
神様:今後の方向性として、米は増産に舵を切り、スマート農業技術の活用など新たな農法で生産性の向上を図る予定です。
T:スマート農業はなかなか日本で普及しない印象がありますが、今後は導入が進んでいくのでしょうか?
神様:お米だけでなく、日本の農業は現在危機的な状況にあると言えます。少子高齢化により農業従事者は減少傾向です。2024年の基幹的農業従事者は約111万人でしたが、2021年と比較すると約19万人減少しています。さらに、農業従事者の中で65歳以上は約80万人で、全体の約72%を占めます。労働環境の過酷さや後継者不足により、農業全体で高齢化が進行しているのです。

T:このまま行くと農業従事者が大きく減少する未来が見えますね。
神様:その通りです。2020年時点で後継者のいない農業従事者は約70%とされており、JAでは2030年には基幹的農業従事者は83万人に、2050年には36万人になると予測しています。したがって、今後の農業は機械やデータを活用した効率化が大きなテーマとなります。例えば、ドローンで農薬散布を行うことで作業時間が平均で61%削減でき、自動水管理システムでは平均で80%削減できた実績があります。これらの効果はインターネット上の「スマ農成果ポータル」で随時公開されています。

T:予測では25年後には農業人口が3分の1以下になるわけですか。作業効率化、少ない人数で農業を回していけるようにすることは農業の死活問題ですね。
神様:農業経営体も減少していきます。それに伴い、1つの経営体の生産量は増加傾向にあります。農林水産省では、2030年に1経営体あたりの生産量を86トンにするとしており、これは、2023年生産量の47トンと比較して約1.8倍です。農業の大規模化、効率化にはスマート農業技術の導入が欠かせないでしょう。
T:農業が縮小し、需要に対して生産が追いつかなければ、米のような値上げも起こるかもしれません。良質な食料が合理的な価格で安定的に供給され、国民がそれを入手できる「食料安全保障」を確保するためにも、農業の効率化が重要でしょう。ここは、スマート農業関連の企業に期待したいところですね。
(この項終わり。次回12/10掲載予定)
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