兜のささやき兜のささやき

第129話 マジックと株

2018.11.14

株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、紅葉が綺麗な公園の道を散歩しながら、投資講義を受けています。


神様:経済界に魔法使いがいます。

T:(唐突なので少々驚いて)えっ、誰でしょう?

神様:欧州中央銀行総裁のマリオ・ドラギ氏です。一般的に中央銀行のトップの発言は、株価や為替レートといった金融市場への影響度が高いとされます。ドラギ氏の発言は、具体的な金融政策を発表することなく、あくまでも方向性を示唆する発言のみで株価上昇などに繋がることがあるため、ドラギ・マジックと称されます。

T:あっ、そういうことですね。聞いたことがあります。

神様:マジック“magic”は魔法のほかに、手品や呪術といった意味合いがあり、その語源は宗教にあります。新約聖書で、イエス・キリストの降誕に当り、お祝いに駆けつけたとされる「東方の三賢人」は、一説ではゾロアスター教を崇拝する祭司達とされ、星占術に長け、イエス・キリストの降誕を予言したと言われています。そのゾロアスター教の祭司の複数形が“magi”です。

T:そうなんですね、それは知りませんでした。

神様:魔法であれ手品であれ、マジックの語源の意味合いは自然界の事象を観察し、それを未来で起こることの予測に役立てようとしたもののようです。

T:そういう意味では、将来を予測して成長分野や伸びる会社を見つける投資と通じる面がありますね。

神様:面白いのは、魔法は心理学的なアプローチでも説明し得ます。例えば、人気のない郊外の一本道の道路に大きな赤い円を書くとします。あなたなら、どうします?

T:円を意識するようになるかもしれません。なんか意味があるような気がして。例えば円を踏まない、円の中に入らないですとか。

神様:それこそが魔法の基本ではないかと思います。そして意識する人が増えれば増えるほど、その力は増すし、様々な解釈もされるでしょう。

T:(いつもにも増して謎な話の展開だなあと思いつつ)はあ…

神様:円にかかわらず、線一本で内側と外側を分けると、経済や投資行動にも変化が出ますよ。例えば、医薬業界では、外にあったものを、内側に取り込もうとする動きが出ています。わかりますか?

T:(急に具体的な話になって驚きながら)薬局ですか?

神様:そうです。さすがですね。これまで、それぞれの専門性を活かす観点から、医薬分業が進められてきました。患者の診察・薬剤の処方を医師が行い、それに基づいて、経営的に独立した存在である薬剤師が調剤や薬歴管理・服薬指導を担当します。

T:大学病院などの大病院を中心に病院外で薬を受け取る医薬分業が進みましたよね。

神様:日本薬剤師会によると、調剤薬局での処方箋受取率(医薬分業率)は全国平均が昨年度72.8%に達しました。一方で、規制緩和も進んでいます。病院の敷地内に出店する敷地内薬局です。病院内ではないところがポイントです。

T:患者さんにとっては、やはり病院から近い方が便利ですものね。

神様:例えば、千葉大学医学部付属病院は敷地内薬局の誘致に踏み切っており、敷地内薬局へ来店した患者への聞き取り調査では98.8%が規制緩和に「よい」と答え、利用した理由の83.5%が「病院との近さ」を挙げています。

T:大手調剤薬局チェーンにとってはチャンスで、投資対象としても今後有望分野となりますね。

神様:そうです。先ほどの円の話ではないですが、病院の内と外、敷地の内と外、そこに人為的に線を引いただけで、成長する会社が生まれるのです。まるでマジックですよね。方向性、すなわち線を示して投資家に影響を与えるドラギ・マジックも似た面があります。

Tさんは、「そういうことか!」と思わず納得し、政策等の『線引き』に精通することによって、将来的な成長企業を占う見方もあるんだなと理解しました。

(この項終わり。次回11/21「リサイクルと株」を掲載予定)

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