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第456話 中小企業で賃上げ実現を 飲食業の省人化・省力化投資に注目

2025.07.16

株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、都内ホテルのラウンジで投資談義を行っています。


神様:7月20日は参議院選挙の投開票日です。物価高が続く中、各党は賃上げや減税など国民の暮らしを守るための政策を訴えています。

T:最近は春闘で高水準な賃上げが達成されたとの報道が目立ちますが、大企業と中小企業とでの規模間格差は依然としてあり、国民に広く賃上げの恩恵が行き渡ってはいないとの課題があります。国民の生活の実情に寄り添った政策が求められますね。

神様:おっしゃる通りです。賃上げについて言えば、政府は令和3年に「新しい資本主義実現本部」を設置しました。デフレ経済を脱却し成長と分配の好循環による成長型経済を実現すべく、議論が行われています。中でも特に賃上げ環境の整備が進められ、2025年の春季労使交渉では、33年ぶりの高水準となった2024年を超え、2年連続で5%を上回る水準を実現しているところです。

T:政府が目指す「賃上げと投資がけん引する成長型経済」ですね。

神様:しかし、一方で成長型経済を実現するためには、賃上げが日本の雇用の7割を占める中小企業・小規模事業者、地方で働く人々にも行き渡ることが重要です。中小企業には大企業とは異なる課題があり、異なるアプローチが必要です。

T:大企業と中小企業の賃上げの格差については様々なところで論じられていますが、結局どうすれば良いのでしょうか?

神様:中小企業等の労働生産性を上げることは重要です。6月13日、政府は「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2025年改訂版」を閣議決定しました。中小企業・小規模事業者の賃金向上を進めるために、生産性向上や価格転嫁や取引の適性化、最低賃金の引き上げなどを計画しています。飲食業、小売業、製造業、医療など、各業界の生産性を向上させるための「省力化投資促進プラン」も策定されています。例えば、医療では労働人口の減少により人材確保はさらに厳しい状況になっていきますが、高齢者は2040年ごろまで増加していきます。その結果、医療現場では今より多くの人材が必要とされる状況となります。医療DXの推進や業務の棚卸し・効率化を強く進め、省力化に力を注ぐ必要があるでしょう。

T:省力化を支援するような機器の導入に補助金が多く出されるわけですね。

神様:飲食業も厳しい状況です。飲食業は約400万人の大きな雇用を創出していますが、店舗運営の多くをパート・アルバイトなどの非正規雇用者が担っています。また、飲食業の約98%が中小企業です。仕事の仕方は労働集約型であり、他産業と比較しても労働生産性が低いのも特徴です。省力化投資促進プランでは、飲食業の労働生産性を2029年度(令和11年度)までに35%向上することを目標とし、中小企業省力化投資補助金などで省力化製品を導入する経費の一部を補助しています。



T:食品を扱いますから、調理や盛り付けなど人の手で行う業務が大半ですよね。労働生産性を上げるのも難しそうです。

神様:例えば、近年はモバイルオーダーのように顧客がスマートフォンなどを使って自分で注文する仕組みが確立しています。それによりオーダーを取りに行く店員が必要ではなくなります。セルフレジや配膳ロボットも導入が増えています。調理の工程でも、経験の浅いスタッフが対応しても質が保たれた料理を提供するため、自動調理を導入する店もあります。こういった機器や仕組みの導入が今後さらに進むことが考えられます。

T:なるほど。今後の飲食業で省力化製品に大きな需要あり、ですね。

神様:労働者が飲食業を敬遠する理由には、厨房の暑さや洗い物に対する嫌悪感もあります。調理工程をIH式にして厨房内の温度上昇を抑え、自動食洗器の導入で洗い物の負担を軽減する取り組みも行われています。飲食業の1人当たりの生産性は、お店による効率的な運営によって改善する可能性があるのです。

T:各店舗で積極的に省力化投資が行われることで業界全体の生産性が向上し、企業の賃上げにつながっていくわけですね。今後の動向に注目したいと思います。

(この項終わり。次回7/23掲載予定)

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