第455話 2025年から企業の熱中症対策“義務化” 怠ると拘禁・罰金刑も
株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、海の見えるカフェでアイスコーヒーを飲みながら投資談義を行っています。
神様:7月に入り、連日暑い日が続いています。気象庁の季節予報によると、2025年の夏(6月~8月)の気温は例年に比べて全国的に高い予想です。気温が高い確率は、九州・四国・中国・東北・北海道の日本海側・太平洋側で60%、近畿・東海・関東甲信・北陸で70%以上となっており、厳しい暑さが続くことが予想されます。
T:ここ数年の夏はどんどん平均気温が高くなっている印象があります。今年もさらに高くなりそうですね。東京も連日、最高気温が30度以上の真夏日が続いています。暑さ対策をしっかり行い、熱中症に十分に注意しなければいけませんね。
神様:近年の5月から9月にかけての熱中症搬送者数の推移を見ると、熱中症による搬送人員は増加傾向です。死亡や重症に至るような重篤なケースも増えています。厚生労働省の統計によると、2024年に全国の職場で熱中症になった人は1,195人にのぼりました。これは過去10年間で最多記録です。

T:すべての人がエアコンの効いた部屋で仕事ができればいいですが、屋外など過酷な暑さにさらされる環境で仕事せざるを得ない仕事もあります。そういった環境は年々命の危険が増しているとも言えます。
神様:厚生労働省では熱中症による死傷者数の業種別の状況を公表しています。2020年から2024年までの合計での死傷者数の割合を見ると、建設業が20%、製造業が19%、運送業が14%、警備業が11%と高い割合となっています。月別の死傷者数では7月と8月に集中しており、年齢別でみるといずれの年齢層でも死傷者が発生していますが、特に50歳代以上で全体の半数以上を占めています。

T:高齢になるほど身体機能の低下などの影響もあり、熱中症を発症するリスクも高くなります。無理をしない働き方が求められますね。最近は「暑さ指数(WBGT)」と呼ばれる指標が多く用いられていますが、これはどのようなものなのでしょうか?
神様:暑さ指数(WBGT)とは、熱中症の原因となる暑さの要素、気温・湿度・輻射(放射)熱・気流を総合的に考慮した指数です。WBGTが高いほど熱中症になるリスクが高くなります。環境省の「熱中症予防情報サイト」では、全国の熱中症警戒アラート等を毎日発表しています。各地のWBGTを測定し、指数に応じてその地域がどの程度危険なのかをレベルに分けて公表しているのです。暑さ指数の予測値で33以上となったとき「熱中症警戒アラート」が発出されます。35以上では「熱中症特別警戒アラート」が発出されます。暑さ指数が高くなるにつれ、熱中症になるリスクは飛躍的に大きくなりますから、これらのアラート情報をこまめに確認することが大切なのです。
T:7月8月は暑さ指数をこまめに確認することにします。
神様:昨今のこのような事態を受け、労働安全衛生規則が改正されました。職場における熱中症による労働災害、特に死亡に至るケースでは、その多くが初期症状の放置、対応の遅れによるものです。2025年6月1日から、熱中症の重症化を防ぐため、企業等の事業者が講ずべき熱中症対策が義務づけられることとなりました。特定の環境下における一定の労働において、対策を怠った場合は6カ月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が科されます。
T:企業側にとっては対策待ったなしですね。具体的にはどんなことをすれば良いのでしょうか?
神様:具体的な対策としては、労働者の健康状態をチェックする体制を整えることや、冷却のための設備、飲料の準備などが考えられます。熱中症対策として有効な作業着を配備することも重要です。
T:最近はファンがついた作業着が人気ですよね。飲料や冷却グッズなどは企業によるまとめ買いも増えるのでしょうか。また、スマートウォッチなどで自分のバイタルデータを確認し、心身の異常を察知することもできますね。こういった健康機器の購入も増えるかもしれません。
神様:夏場の熱中症対策の重要性が増している中、熱中症対策で活躍する企業にとっては大きなチャンスが到来したと言えます。働く人の命を守れるよう、しっかりと活躍してほしいところです。
(この項終わり。次回7/16掲載予定)
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