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第453話 半導体市場予測、2025年も二桁成長へ 「エッジAI」も期待

2025.06.25

株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、都内の喫茶店でアイスコーヒーを飲みながら投資談義を行っています。


神様:今日は今後の半導体市場についてお話しましょう。WSTS(世界半導体市場統計)は6月3日、2025年春季半導体市場予測を発表しました。

T:生成AIが広く活用され、データセンターの建設も活発に行われています。今後もしばらく半導体市場は成長を続けるのでしょうね。

神様:さすがTさん、おっしゃる通りです。詳しく見ていきましょう。まず、2024年の世界の半導体市場は前年比で19.7%の増加となりました。2025年の予測では2024年と同様に二桁成長となり、前年比で11.2%の増加となる7,008億ドルと予測されています。AI需要を見据えたデータセンター投資によるメモリ製品などの高成長が予測されています。

T:11.2%ということは、2024年よりは成長が鈍化するということですか?

神様:米国と中国の貿易摩擦が激化しています。米国の関税問題や輸出規制などの地政学的リスクが高まっていることから、一部の製品では需要の減退も起き得ると予測されています。

T:なるほど。イスラエルやイランの紛争も気になりますし、地政学的リスクはどんどん高まっている印象ですね。

神様:日本の市場予測も見てみましょう。日本半導体製造装置協会によれば、2025年度の日本製製造装置の出荷額について、前年度比で4.9%増となる5兆41億円と予測しています。半導体市場が拡大するとともに、日本製の半導体製造装置の出荷も2026年度まで右肩上がりで伸びていく予想です。生成AIを中心としたAI関連半導体の開発投資が半導体の需要拡大をけん引しています。GPUやハイエンドメモリなどのAI向け半導体の高性能化が半導体メーカーの開発投資を促し、製造装置や半導体材料の出荷増加につながっています。

T:予想した通り生成AIが要因ですね。しかし、生成AIの拡大はいつまでも続くものでしょうか?生成AIの活用のされ方など、今後どんな変化があるのでしょうか?

神様:いい視点ですね。WSTSの2026年予測を見てみましょう。市場予測は前年比で8.5%の増加となる7,607億ドルと予測しています。この年もAI関連がけん引役になると思われますが、エッジAIのような技術により応用範囲が広がることが期待されています。

T:エッジAIとは何ですか?

神様:1カ所で行われていたコンピューターの計算処理を分散させ、利用者の端末の近くでデータ処理を行うことを「エッジ処理」または「エッジコンピューティング」と呼びます。エッジAIとは、AIのデータ処理を決められたサーバーで集中して行うのではなく、例えばPCやスマートフォンなどの端末で処理することをいいます。ChatGPTなどのAIは、クラウド上のサーバーで処理を行いますが、エッジAIでは利用者のPCやスマホなどの端末上でデータ処理を行います。端末が直接AIを搭載することで、データ処理が分散化され、より高速な処理が可能となるでしょう。

T:そうすると、端末にもさらに高い性能が要求されますよね。

神様:おっしゃる通りで、エッジAIに適した半導体の開発も求められます。今後PCやスマホに限らず、自動車や工場の機械などさまざまな機器にAIが搭載されることでエッジAI、そしてAIの活用範囲はより大きな広がりを見せることになるでしょう。

T:AI活用が今よりさらにパワーアップしますね。楽しみです。

神様:エッジAIの他にも、自動車における先進運転支援の拡充やEVの普及などの電装化の進展も半導体成長を促していきます。現在のところ、これらの分野の最終製品の需要には不透明感が見られますが、長期的には成長をけん引することとなるでしょう。

T:あとは、経済が安定して発展していくことが望まれますね。

神様:半導体市場の不透明要因は何と言っても地政学的リスクです。米国による中国への半導体輸出規制は先端技術の中国での軍事転用を防ぐ目的で行われています。一方で米国は5月、AI向け半導体などへの輸出規制を見直し、主に中東向けの輸出規制を緩和する動きも見られます。中東地域では大規模なデータセンターの建設計画もあるようです。中国との貿易摩擦はしばらく続くと見られますが、中国以外の地域の成長が半導体の新たな成長のけん引役となるかもしれません。

(この項終わり。次回7/2掲載予定)

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