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第460話 ”燃える氷”にレアアース 日本の海底資源に注目集まる理由とは?

2025.08.13

株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、海の見えるカフェで投資談義を行っています。


T:8月に入り、関東地方を中心に厳しい暑さに見舞われています。8月5日には群馬県伊勢崎市で観測史上最高気温を更新する41.8度を観測しました。ここ最近は毎年暑さが厳しくなっているように思いますが、今後年々さらに暑さが厳しくなっていくのでしょうか?電力供給も気になるところです。

神様:資源エネルギー庁によれば、2025年夏季の電力需給は10年に一度の厳しい暑さを想定した電力需要に対し、安定供給に必要な最低限必要な予備率を確保しているようです。

T:データセンターや半導体工場の新増設もあり、今後10年間の電力需要は増加していく見通しのはずです。今年は大丈夫でも、今後が心配になりますね。

神様:おっしゃる通りです。ロシアのウクライナ侵攻や米中対立の激化など、国際情勢の緊迫化や地政学リスクの高まりにより、エネルギーをめぐる状況はさらに悪化する可能性もあります。そのため、政府は世界情勢に左右されないエネルギー政策を行っていく必要があるのです。2024年3月、政府は「海洋エネルギー・鉱物資源開発計画」を改定しました。これは日本の周辺の海域に存在するエネルギー資源や鉱物資源を活用しようとする計画で、2030年までに民間企業が主導する商業化に向けたプロジェクトが開始されることを目指し、国が支援を行うものです。Tさんは「燃える氷」はご存知ですか?

T:聞いたことがあります。確か「メタンハイドレート」ですね。

神様:正解です。メタンハイドレートとは、天然ガスの原料であるメタンガスが海底下で氷状に固まっている物質のことで、火を点けると燃えるために燃える氷とも呼ばれます。燃える氷はその体積の約160倍もの豊富なメタンガスを含有し、それが日本の周辺海域に大量に存在すると言われています。

T:それを採掘して活用できれば素晴らしいことですね。

神様:2030年の日本の電源構成比目標では、天然ガスは20%程度を占めています。日本の資源の安定確保面において大きな意味を持つことになるでしょう。一方、中国や韓国など周辺諸国との開発競争も激化しています。今後日本企業による開発がさらに加速することが必要です。さて、海洋エネルギー・鉱物資源開発計画では他にも様々な資源を取り上げていますが、Tさんは「レアアース」はご存知ですか?

T:レアアースは一時期中国関連で話題になりましたが、どのような資源なのでしょうか?

神様:レアアースはスカンジウム、ネオジムなど、17種類の元素の総称を言います。産出量が少なく、抽出が難しいレアメタルの一種であり、スマートフォン、電動自動車や再生可能エネルギーの発電設備などの製造に欠かせない貴重な資源です。一方で、例えば国別レアアースの埋蔵量割合を見ると1位は中国で49%と、他国に比べて大きな割合を占めています。レアアースが特定の地域に偏在しているため、時として外交カードに利用されることがあります。

T:中国が輸出しないと言えば、とたんに困るのは中国に頼っていた国ですからね。経済安全保障上そのような事態は避けたいところです。そのレアアースが日本の周辺の海域に存在しているということですか?

神様:レアアース泥と呼ばれる、世界でも有数の大量のレアアースを含む堆積物が南鳥島周辺の大陸棚で確認され、注目を集めています。しかし、水深6,000m海域に多く存在しているため、深い海域での採鉱・揚泥技術が必要となります。民間での商業化においては、それらの技術が効率化・低コスト化することも必要でしょう。

T:安定したサプライチェーンを確保するためには、レアアースを自国で確保できる技術が欠かせないですね。今後の開発にさらに力が入ることを期待します。

神様:日本の近海にあるとされるレアアース泥は中・重希土類が多く含まれているようです。中国は、2025年4月から中・重希土類7種のレアアース関連品目の輸出管理を行っています。これは米国による相互関税への対抗措置とも見られています。日本近海でこれらのレアアースが採れるとなれば、国際的にも大きなインパクトとなるでしょう。

T:国際政治的な意味でも、開発に力を入れる大きなモチベーションがあるわけですね。海底資源の開発が進み企業による商業活用が進むことは、日本のエネルギー・資源政策にとって大きな利益となり、世界情勢にも影響を与えられる大きなプロジェクトであることがよく分かりました。今後の動向が楽しみです。

(この項終わり。次回8/20掲載予定)

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