第461話 拡大続ける宇宙ビジネス 背景に宇宙空間の防衛力強化
株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、都内の喫茶店でコーヒーを飲みながら投資談義を行っています。
神様:Tさん、今年のはじめに宇宙産業についてお話したこと( 第432話 成長加速する世界の宇宙産業 日本に期待できること )を覚えていますか?
T:覚えています。今後、宇宙産業は世界で最も成長する産業のひとつであり、世界市場は2030年には90兆円に達する見通しとのことでした。日本も政府が2024年に「宇宙戦略基金」を創設し、10年間総額1兆円規模の基金で企業とJAXAが開発を進めています。
神様:その通りです。しかし、どうやら更に規模が拡大しつつあるようです。世界経済フォーラムによると、2035年の宇宙市場は1兆7,900億ドルと、2023年比2.8倍に拡大すると分析しています。これはCAGR(年平均成長率)で見ると約9%の伸びとなります。

T:今年初めのお話では、2023年から2030年までのCAGR(年平均成長率)は約7%でした。2%も伸びていますね。
神様:ロケット打上げ能力を有する主要国に加え、その他の先進国や地域でも宇宙産業へ参入する動きがみられます。官民を挙げた積極的な取り組みが急速に進みつつある模様です。
T:日本も負けていられませんね。
神様:日本の宇宙開発予算も近年大幅に増加しています。2025年度当初予算案及び2024年度補正予算における宇宙関係予算は9,365億円となりました。宇宙戦略基金によって前年度より大きく増えた2024年度が8,945億円でしたから、そこからさらに5%の増加です。

T:宇宙産業の活発化の背景には、安全保障に関わる情報収集機能の強化、気象観測による防災や減災の実現、自動運転などの新たな産業の創出があるのでしたね。
神様:その通りです。特に近年重要性が高まっているのは安全保障でしょう。宇宙はかつて平和利用を目的としていましたが、ここ最近は様相が変化しています。そのことがはっきりと表れたのが、防衛省が7月28日に発表した宇宙での防衛力強化の指針です。防衛省はこの日、「宇宙領域防衛指針」と「防衛省次世代情報通信戦略」を発表し、中谷防衛大臣も臨時会見を開きました。
T:宇宙領域防衛方針とは、どのような内容なのでしょうか?
神様:衛星による様々なサービス提供など、宇宙空間の利用は現在の国民生活にとって必要不可欠なものとなっています。自衛隊にとってもなくてはならない活動基盤です。それは、言い換えれば安全保障面でも守るべき重要な領域であるということです。
T:国の人工衛星を守るだけでなく、民間企業が安心して宇宙を利用できるような安全を確保することが、これからの自衛隊にとっても重要な任務になるということですね。
神様:報道でも言及されていますが、中国やロシアをはじめとする一部の国家では、いわゆるキラー衛星と呼ばれるような他国の衛星を妨害・無力化する技術開発を活発化させています。衛星が衛星を攻撃するような”宇宙領域を舞台にした戦闘”の時代が目の前まで迫ってきているのです。
T:陸・海・空を守るのと同じように、宇宙空間の安全も確保することが必要になっているのですね。
神様:ちなみに宇宙領域防衛指針では、航空自衛隊も仮称ですが「航空宇宙自衛隊」と表現されています。
T:宇宙空間も含めて国を守るためにも、宇宙開発待ったなしの状況ですね。これを機に平和利用を目的とする開発も進展すると良いのですが。
神様:防衛省次世代情報通信戦略では、次世代の情報通信インフラにおいて、これからの新たな戦い方の前提として、リアルタイムでの情報収集を重要視しています。それを実現するための大容量通信を技術でどのように進展させていくかを定めており、今後の進展が期待されます。人工衛星、ロケット製造、位置情報サービスなど、宇宙産業は広範囲です。観測データを用いた防災・減災への取り組み、都市開発や農業の効率化、さらに自動運転などの新たな産業創出への貢献も期待されます。今後の関連企業の開発の進展に期待しましょう。 (この項終わり。次回8/27掲載予定)
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