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第179話 防げ地球温暖化 「脱炭素」社会は実現できるか?

2019.10.30

株の神様から投資の極意を教えてもらっているTさんは、お金の話は社会に出てから大切なので、家族にもその内容をわかりやすく伝えています。今では、奥様のA子さん、高校生の長女Y、中学生の長男Sも投資に興味を持つようになりました。今日は地球温暖化問題の話から、投資の話になりました。


A子:国連の気候行動サミットで演説した環境活動家のグレタ・トゥンベリさんが話題になっているね。最近、台風や豪雨災害が多いし、このままでは本当に地球温暖化で取り返しのつかないことになりそう。

T:マスコミはグレタさんのことを面白く報道しがちだけれど、本当に考えなければいけないことが見えてこないよね。これまでも投資家の視点から、ESG投資について (第71話 ESG投資って何?(その1)) や環境に優しいエアコンの話 (第163話 堅調に伸びる「暑さ対策」) のように、環境に貢献できることを考えてきたけれど、それだけでは足りないよね。

Y:実際、二酸化炭素の排出量も家庭より企業からの方がずっと多いんだし、私にどうこうできる問題ではない気がするわ。

T:そんなことはないよ。できることは必ずあるから、まずは、正しい情報を得て考える材料を集めることから始めてみよう。

Y:例えばどんなこと?

T:2020年以降の温室効果ガス排出削減等のための国際枠組みである「パリ協定」では、今世紀末時点での世界の平均気温の上昇幅を、産業革命前から2度未満に抑えるという目標を定めているよ。産業革命っていつごろ起こったか知ってるかな?

S:はい!1700年代後半から1800年代前半にかけて、第一次産業革命が起こったんだよね。

T:さすがだね、その通り!この目標を達成するためには、今世紀後半には、石炭や石油を燃焼させて発生する二酸化炭素などの温室効果ガスの排出を実質ゼロにする、いわゆる「脱炭素」社会を実現する必要があると言われているんだ。

S:そんなことできるのかな?

T:エネルギー資源が乏しい日本では、石炭を燃料とした火力発電所が活躍していて、電力の安定供給のためには今後も使っていく必要があると言われている。今は、できるだけ温室効果ガスの排出を抑制する発電所を開発したり、燃料を石炭より温室効果ガスの排出が少ないLNG(液化天然ガス)に切り替えるなど、必死の努力をしているんだよ。

A子:環境に優しいLNGなら、脱炭素社会を実現できるのかしら。

T:実現は無理でも近づくことはできるよ。ただし、LNGは石炭よりコストがかかるんだ。日本は島国だから、天然ガスの産出国と陸続きになっていないし、産出国からのパイプラインもないから、天然ガスを運び入れる場合はマイナス160度くらいまで冷却して液化して、船で運搬している。2018年のLNGの輸入量は、日本が全体の26.2%と世界一だったんだよ。

A子:LNGがさらに使われるようになれば、電気料金のさらなる値上げの可能性もあるのね。それでも、脱炭素社会の実現は厳しいのね。

Y:私は、今年ノーベル化学賞を受賞した吉野彰さんのリチウムイオン電池が気になるな。今は大規模な電池の開発を研究していて、これが電気自動車や将来の環境問題の解決策として期待されているのよね。

T:本当にすばらしい研究だよね。将来は温室効果ガスを全く排出しない、新しい方法がきっと開発されると思うよ。こうして見ると、地球温暖化対策への具体的なアプローチがいろいろ見えてくるよね。こうした様々な努力に、投資家として応援していければいいんじゃないかな。

A子:投資でなら、私達も日本や世界のエネルギー政策に参画できるわね。人類が諦めるのは、まだ早いわね。

(この項終わり。次回11/6「今年の話題商品に注目 スマートフォンから見える未来」掲載予定)

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