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第231話 世界の「水問題」は誰の問題か?「仮想水」とは

2020.12.02

株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、海の見えるカフェで投資談義を行っています。


T:今年は夏以降、全国的に雨が少ない地域が多かったようですね。台風の上陸がない1年になるなど、水害の被害も少なかったように思います。

神様:そうですね。コロナ禍の中で水害が少なかったのは良かったですね。来年も同じとは限りませんから、備えを怠らないようにしましょう。今回は「水をめぐる問題」について話をしましょう。Tさんは「水問題」と言えば何を思い浮かべますか?

T:干ばつ、日照り、水不足…。雨が少なければ少ないで問題ですよね。「水資源問題」は世界中で起こっていますが、原因として、「人口の増加」、「気候変動」、「水紛争」の3つが挙げられるそうです。また国連では、持続可能な開発目標(SDGs)の観点から、2030年までにすべての人が安全な水を、必要な時にいつでも利用できるようにすることを目標としています。

神様:その通りです。人間は水がなくては生きてはいけません。現在、世界人口のうちで約7億人が水不足の状況の中で生活し、不衛生な水しか得られないために年間で約180万人の子どもが亡くなっています。Tさんは、日本は水資源が豊かな国だと思いますか?

T:日本は雨も多く降りますし、水道の蛇口をひねればきれいな水が出ます。豊かな国だと思いますが。

神様:「水資源賦存量」という言葉があります。これは、理論上人間が最大限に利用可能である水の量を算出したものです。日本の一人当たりの水資源賦存量は、実は世界平均の2分の1以下であることが知られています。日本の半分程度しか雨が降らないメキシコと同じくらいと考えられています。

T:メキシコと同じですか?意外ですね。なぜでしょうか?

神様:まず、日本は国土のわりには人口が多いです。また、地形が急峻で河川の流路延長、言い換えれば河川の長さが短く、雨は梅雨の時期や台風シーズンに集中します。そのため、水資源賦存量のかなりの部分が水資源として利用されないまま海に流出してしまいます。日本は、水資源が豊富であるとは言えないのです。

T:なるほど。水不足が身近な問題に思えてきました。

神様:それだけではありませんよ。Tさんは「仮想水(バーチャルウォーター)」をご存知ですか?

T:いえ、初めて聞きました。“仮想の水“ですか?

神様:仮想水は概念です。環境省によれば、食料を輸入している国、つまり消費国において、もしその輸入食料を自国で生産するとしたら、どの程度の水が必要かを推定したものです。例えば、1kgのトウモロコシを生産するには、灌漑用水として1,800リットルの水が必要です。また、牛は穀物を大量に消費しながら育ちます。牛肉1kgを生産するには、トウモロコシの約20,000倍もの水が必要であると言われています。

T:つまり、輸入する食料をすべて必要な水の量として考えれば、他国の水にどれだけ頼っているかがわかるということですね。

神様:おっしゃる通りです。日本の食料自給率は40%程度であり、半分以上を海外から輸入しています。これは海外の水に依存して生きていることと同じです。

T:水不足、水資源の問題は身近どころか自分たちの問題である、ということですね。
 
神様:そうですね。私たちの問題として考えるべきですね。日本企業には、高い水処理能力を持った企業が多数あります。SDGsの目標実現に向けて、日本の技術力を積極的に活用したいですね。

T:日本企業による世界的な水不足問題の解決に期待したいです。

(この項終わり。次回12/9掲載予定)

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