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第250話 人材業界に変化?中小企業で同一労働同一賃金スタート

2021.04.21

株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、都内のホテルラウンジで投資談義を行っています。


T:3月期決算企業の決算発表の時期となりました。世界的に新型コロナウイルスワクチンの接種が進み、経済が正常化に向かう期待の中での発表となりますね。

神様:はい。決算発表では、世界経済の回復や円安を背景に、輸出企業を中心に多くの企業が2022年3月期の業績計画で回復を見込むと期待されていますね。さて、新年度が始まりましたが、働き方改革で“ある変化”がありました。何だかわかりますか?

T:「同一労働同一賃金制度」の義務化ですね。4月から中小企業に「パートタイム・有期雇用労働法」が適用されました。

神様:その通りです。ところで、同一労働同一賃金とはどういうことか説明できますか?

T:正社員と、パートや契約社員、派遣社員などの非正規雇用者との間の不合理な待遇差を禁止する措置です。基本給、賞与、通勤手当や扶養手当などの各種手当、教育訓練、そして夏季・冬季休暇などについて、具体的に理由を説明できない待遇差は是正され、待遇が異なる場合は理由の説明も義務付けられることとなりました。

神様:さすがですね。大企業では昨年度から施行されていましたが、今年度からは中小企業にも適用され、どの企業でも同一労働同一賃金がスタートすることとなりました。

T:多様な人々が多様な働き方で生きていくための大きな一歩ですね。

神様:一方で、この制度で大きな影響を受けるのは人材派遣業界です。派遣社員の同一労働同一賃金化を進める政策としては「改正労働者派遣法」が2020年4月に施行されました。派遣元企業は、「改正労働者派遣法」に基づいて、派遣社員の待遇を決めなければなりません。その方法としては、派遣先正社員と派遣労働者の待遇を合わせる「派遣先均等・均衡方式」と派遣元企業の労使協定に基づいて待遇を決定する「労使協定方式」があります。

T:派遣社員を雇う企業は派遣社員の待遇を改善することになりますよね。そうすると派遣社員の運用コストが上がり、手続きが煩雑化して、派遣社員の受け入れを躊躇する可能性もありそうですね。

神様:まさにその通りです。派遣元企業と派遣先企業による待遇改善の交渉が難航する可能性もあります。企業は派遣社員を雇いづらくなり、仕事の内製化も進むかもしれませんね。

T:人材派遣業界にとってあまり良いことがないようにも思えますが。

神様:しかし一方で、派遣社員の待遇改善により、派遣元企業には優秀な人材が集まってくる可能性もあります。なぜ、働き方改革を進めるのかを思い出してみてください。日本の企業の終身雇用制度が崩れ、長寿化、少子高齢化が進む中、今後の日本の生産性を上げるには、多様な人が多様な働き方を実現できる改革が欠かせません。正社員という働き方でなくとも生活ができ、休みがあり、スキルを磨くことができる。今後労働期間が長期化する中で人々は多様な働き方を経験することになります。人材派遣業界が果たす役割が今後ますます大きくなっていくでしょう。

T:確かに、その通りですね。

神様:低賃金で派遣先を確保していた人材派遣企業などは淘汰されることもあるかもしれません。また、人材派遣企業のM&Aによるシェアアップも考えられます。日本の未来により適応した業界再編は考えられるかもしれませんね。

T:なるほど。いずれにしても大きな変化ですね。今後の動向をしっかり注目していこうと思います。

(この項終わり。次回4/28「コロナ禍は今が正念場 建設業界の動向を探る」掲載予定)

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