兜のささやき兜のささやき

第257話 景気動向の重要指標 鋼材市況が上昇・粗鋼生産量も回復進む

2021.06.16

株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、初夏の日差しの中、公園を散歩しながら投資談義を行っています。


T:国内での新型コロナウイルスワクチンの接種が進んでいます。菅首相は6月9日の国会で、11月にかけて希望する全国民にワクチン接種を終えると表明しました。高齢者だけでなく、職場、大学や65歳以下の人への接種の動きが広がっています。

神様:いいですね。ワクチン接種は欧米に比べて遅れていましたが、少しずつ遅れを取り戻していますね。

T:6月10日時点でのワクチンの総接種回数は2000万回を超え、接種率も15%を超える計算になります。ワクチンの「職域接種」は6月21日以降で始まる予定となっています。今後さらに接種のスピードが加速することを期待したいですね。

神様:ワクチン接種で先行する米国では、接種率が10%に達した2月頃からサービス消費の回復が目立ったとの指摘があります。日本でも消費動向に変化が見られるかもしれません。ここは注視していきましょう。

T:まさに、経済活動が回復していく足音が聞こえるようですね。

神様:さて、今日は「鋼材」について見ていきましょうか。鋼材とは何か、Tさんはわかりますよね?

T:鉄鋼、鋼から作られた材料のことで、自動車、家電や産業機械の部品などに使用されるのが鋼材です。製鉄所で粗鋼が作られ、粗鋼から鋼材が作られ、鋼材から自動車や家電などが作られますから、粗鋼生産量は景気の動向を見る指標としても使われていますね。

神様:その通りです。鋼材の市況や粗鋼生産量は景気動向にとって大切なバロメーターと言えます。2020年、コロナ禍で鋼材の市況は下落しましたが、ここへ来て反発に転じています。東京現物市場の価格を見ると、「薄鋼板」は2020年6月に8.1万円まで下落しましたが、2021年5月には9.8万円まで上昇しました。「棒鋼」も2020年5月に6.5万円まで下落しましたが、2021年5月には8.5万円まで上昇しました。ともに、コロナ禍以前を上回っている状況です。

T:コロナ前を上回っているのはなぜでしょうか?

神様:まず、世界的に新型コロナワクチンの接種が進んで経済が正常化に向かい鋼材の需要が回復していることが市況回復の背景にあります。その上で、鉄鉱石や原料炭など鉄の主原料の価格上昇や、原料を運ぶ海運運賃の上昇などが影響しています。

T:なるほど。

神様:これにより、粗鋼生産量も回復傾向にあります。日本鉄鋼連盟によると、日本国内の粗鋼生産量は2020年6月に前年同月比で36.1%減の562万トンまで落ち込みました。しかし、2021年3月には、前年同月比で4.6%増の831万トンとなり、13か月ぶりに前年同月比でプラスに転換しました。

T:ちょうど1年前の今頃が”どん底”の状態でしたね。その後もコロナ禍は続き、感染拡大の波は何度も押し寄せていますが、感染対策の徹底、飲食店などの休業、ワクチンの接種など、目の前のことに精一杯対応して乗り越えてきました。あと一息、この回復を大切にしていきたいところです。

神様:今後も世界的に新型コロナワクチンの接種が進み、経済活動の正常化も進んでいきます。鋼材の市況の上昇や粗鋼生産の回復も続き、今後の”好循環”が訪れることを期待したいですね。

(この項終わり。次回6/23「「グリーン×デジタル」日本強み持つリチウムイオン電池に期待」掲載予定)

投資・相続のご相談は
いちよし証券へ

全国の店舗にて、お客様の資産運用や相続についてのご相談を受け付けております。
お客様の人生設計に寄り添いながら、最適なご提案を行います。

PAGE TOP
PAGE TOP