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第288話 高い成長を期待「脱炭素」市場に熱い視線

2022.02.09

株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、下町の茶店で投資談義を行っています。


T:2022年最初の国会が始まり、1月17日には岸田首相による施政方針演説が行われました。どの分野が要注目でしょうか?

神様:気候変動問題への対応が世界的に急務であることは、昨年もお話しました( 第266話 CO2排出量 日本は世界で何番目?急がれるエネルギー改革 )。まずは、この問題への対応を確実に進めていくことが求められます。

T:政府は昨年、2030年度の温室効果ガスの排出削減目標を、2013年度比で46%減とすることを決定しました。それに伴い、2030年の目標として、火力エネルギーの電源比率を全体の41%程度まで減らし、再生可能エネルギーの電源比率を36~38%とする目標を掲げているのでしたね。

神様:また、2050年のカーボンニュートラル実現へ向け、2兆円の「グリーンイノベーション基金」が創設され、野心的な目標に取り組む企業などに対して最長で10年間の支援を行います。これにより、太陽光発電や蓄電池、カーボンリサイクルなどの先端技術の開発・実用化を支援し、目標達成に向けて加速させていきたいところです。

T:目標達成のためには、力強い技術革新が求められるということですね。

神様:その通りです。蓄電池や太陽光発電だけでなく、新しい2次エネルギー供給形態として、水素やアンモニアをCO2なしで生成する技術や、排出されたCO2を有効利用するCCUS・カーボンリサイクルの技術が重要性を増すことになります。Tさんは、「CCUS」とは何かご存知ですか?

T:はい。CO2関連技術として「CCS」と「CCUS」がありますが、CCSとは、発電所や化学工場などから排出されたCO2を他の気体から分離し、地中に貯蓄する技術。そしてCCUSは、貯蓄したCO2を利用する技術を言います。

神様:その通りです。CO2をうまく切り離して格納し、有効に活用できれば、地球温暖化問題の解決に大きく貢献することができます。矢野経済研究所では、これらの技術革新が進んだ場合、2050年の関連市場規模が3兆9,850億円へ拡大すると予測しています。

T:約4兆円市場、日本の各企業の研究・開発力に熱い視線が注がれているのもうなずけます。今後の開発に期待したいです。

神様:さて、再生可能エネルギーの普及には、効率的な電力インフラの整備も必要です。2022年4月からは「エネルギー供給強靱化法」が施行されます。

T:この法律によって、災害時に送配電事業者の連携が求められるようになり、送配電網の強靱化や災害に強い分散型電力システム化が盛り込まれているのですよね。

神様:そうです。自然災害への対応や地政学的なリスクの変化、そして再生可能エネルギーの主力電源化がエネルギー供給強靱化法の目的です。今後の電力インフラに大きく影響を及ぼすことになるでしょう。

T:それにしても、スケールが大きい地球規模の課題である一方で、自然災害が年々激甚化・頻発化し、猶予が許されない厳しい課題でもあります。日本全体で、課題解決に向けて取り組む必要がありますね。

神様:再生可能エネルギーの普及に向けた取り組みは長期的なテーマです。このテーマをチャンスとして生かし、次世代の技術開発を進めましょう。関連企業の活躍に期待したいところです。

(この項終わり。次回2/16「急成長する「AI画像認識」 活用シーン増える」掲載予定)

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