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第305話 経済正常化・ロシア影響 上昇基調が続く原油・銅市況

2022.06.15

株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、都心にあるカフェで投資談義を行っています。


神様:今日は久しぶりに、原油と銅の市況について見ていきましょう。

T:前回は昨年の7月( 第263話 経済正常化へ原油・銅市況が高値 今後も高水準が続く理由 )でしたね。今後も高水準が続くとのお話でした。

神様:結論から言いますと、2022年4月以降も原油と銅は高水準の上昇基調を続けています。原油の価格推移、WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)の先物期近価格を見ると、2020年4月の16.94ドル/バレルから、2021年7月には75.16ドル/バレルまで上昇しました。これが前回のお話でしたが、その後、2022年3月には115.68ドル/バレルまで上昇しました。実に約2年で6.8倍となりました。

T:背景としては、世界的に新型コロナワクチン接種が進んでいることによる経済正常化への期待があると思います。しかし今回はそれだけでなく、ロシアの影響もありますよね。

神様:その通りです。2022年2月から始まったロシアによるウクライナ侵攻によって、欧州連合(EU)ではロシア産石油の海路からの輸入禁止措置を行っています。また、G7は5月9日の首脳会合により、ロシアからの石油の輸入を禁止する方針を表明しました。Tさんは、ロシアが世界で何番目の産油国かご存知ですか?

T:確か、世界で3番目です。

神様:正解です。1日あたりの原油の生産量の多い国では、1位はアメリカ合衆国、2位がサウジアラビア、そして3位がロシアです。原油の供給縮小の影響は大きいと言えます。一方で、6月1日に中国・上海のロックダウンが解除されました。今後、中国の経済活動が再び活発化することが予想されます。原油の需要は拡大するでしょう。6月2日には石油輸出国機構(OPEC)加盟国と主要産油国でつくるOPECプラスが原油の増産拡大を決めましたが、今後の影響を注視しましょう。

T:この状況だと、今後はさらに上昇基調が続くと見るのが自然ですね。

神様:銅についても、同じことが言えます。LME(ロンドン金属取引所)3カ月先物価格を見ると、2020年3月の4,791ドル/トンから2021年5月には1万417ドル/トンまで上昇。そして2022年3月には、1万674ドル/トンまで上昇し、約2年で2.2倍となりました。ロシアは銅の生産能力も高く、制裁による銅の供給懸念が価格上昇の背景にあります。

T:原油も銅も、ロシアのウクライナ侵攻が長期化するほど、影響が大きくなりそうですね。

神様:銅や銅合金を加工した伸銅品の生産も見てみましょう。こちらも引き続き回復しています。国内の伸銅品生産量は、2021年度が新型コロナの影響で落ち込んだ反動により前年度比で17.7%増の77.28万トンとなり、4年ぶりに増加しました。日本伸銅協会の見通しでは、2022年度は半導体・自動車向けなどの需要が寄与し前年度比で2.5%増の79.18万トンと見込んでいます。

T:前回のお話( 第263話 経済正常化へ原油・銅市況が高値 今後も高水準が続く理由 )で、銅は電気をよく通す導体として使われるため、「脱炭素」関連での需要が見込まれているのでした。2050年カーボンニュートラルの実現に向け銅の活用がさらに注目されていくことと思います。

神様:政府は今後10年間に官民協調で150兆円規模のグリーン・トランスフォーメーション(GX)投資を実現することを検討しています。こちらも、今後の動向に注目していきましょう。

T:いずれにしても、まずはロシア・ウクライナ情勢が早く平和へと向かうことを願います。

(この項終わり。次回6/22「需給ひっ迫いつまで続く?半導体業界の今後を見る」掲載予定)

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