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第362話 2025年見据えた「地域医療構想」 医療難民を救うサービスとは?

2023.08.23

株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、都内ホテルのラウンジで投資談義を行っています。


神様:世界の最先端と言っても過言ではない日本の少子高齢化ですが、特に2025年は日本にとって大きな変化が訪れる年となります。

T:「2025年問題」( 第324話 団塊の世代、まもなく後期高齢者に シニアビジネス拡大へ )ですね。この年に団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となります。日本の人口の約5分の1にあたる人が75歳以上となり、医療費や介護費の増加や現役世代への負担が増えることが懸念されます。私たちもこれまで何度も取り上げてきましたね。

神様:高齢化による医療費の増加は大きな課題です。現在、政府は2025年に向けて「地域医療構想」を掲げ、目指すべき医療体制の構築に取り組んでいます。

T:聞きなれない言葉ですが、「地域医療構想」とは何でしょうか?

神様:2025年以降、日本の医療のニーズには大きな変化が生じることが予想されます。現在の病院の体制では足りない部分や無駄な部分が発生すると見られます。また、都市と地方、都道府県ごとでも必要とされる医療サービスに違いがあるでしょう。2025年に向けたそのような変化を地域ごとに集計し、必要に応じた医療を提供する体制を構築することが「地域医療構想」です。

T:なるほど。

神様:地域医療構想では病床数が重要なポイントとなります。病床は、医療機関で患者に提供される入院用のベッドですが、正確な定義は医療法によって定められています。1つの病床には担当となる医師、看護師などがつき、医療サービスが受けられると考えるとわかりやすいでしょう。各都道府県では、病床数が多いほど医療費が高い傾向が見られます。2025年に向けて医療需要と病床の必要量を「高度急性期」「急性期」「回復期」「慢性期」という4つの医療機能ごとに集計し、地域の実情に沿った体制にしようとしています。

T:なかなか専門的な用語で難しいですが、それぞれの患者さんに合った医療を提供する上で、大きく4つの機能に分類し、それを都道府県のニーズごとに調整していくのですね。

神様:そうですね。この集計を進めていく中で気になる点があります。4つの医療機能ごとの病床数について、2025年での見込みと実際に必要な量を比較すると、高度急性期、急性期、慢性期の各機能の病床が過剰となっている一方で、回復期機能の病床は不足しているということです。

T:つまり、このまま進めば回復期機能については医療を受けられない可能性があるということですか?今後の日本で新たな“医療難民”が発生するのでしょうか?

神様:そこが私も気になるところです。回復期機能とは、厚労省では「急性期を経過した患者への在宅復帰に向けた医療やリハビリテーションを提供する機能」を指すものとしています。現在のところ、そういった回復期機能の不足は発生していません。もちろん、このような過不足を調整して適切な医療サービスを受けられるようにしていくことは大前提でしょう。その一方で、厚労省によると集計結果と将来の病床の必要量との単純比較によって、大きな不足が発生する疑いが生じているという見解もあるようです。

T:なるほど。しかし後期高齢者が増えていく中で、病院から離れて在宅療養を行ったり、リハビリを経て在宅復帰することは、大切なポイントになりそうですね。

神様:おっしゃる通りです。また、この調査では「慢性期機能」の病床は、症状が軽い患者の70%が退院する前提で算出されています。慢性期機能は、長期にわたり療養が必要な患者を入院させる機能であり、難病患者なども含まれます。2025年の病床数の見込みと必要量はほぼ等しい数字ですが、実際は足りない可能性もあるのではないでしょうか。

T:やはり在宅医療が重要になってくる、ということですか?

神様:はい。しかし、難病患者や末期がん患者などでは、在宅での療養が難しい場合もあります。それこそ医療難民になりかねません。今後は、そういった患者をサポートするサービスの提供が望まれるでしょう。訪問看護や訪問調剤などの在宅医療を支援する企業、難病患者を受け入れる施設やホスピスなどを提供する企業の活躍の場は、今後大きく広がることが期待されます。

(この項終わり。次回8/30掲載予定)

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