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第400話 ネコの手も借りたい?人手不足で人材の採用難強まる

2024.05.29

株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、下町のお茶屋さんで抹茶を飲みながら投資談義を行っています。


T:前回は「医師の2024年問題」ということで、医師の過酷な労働実態に触れました(第399話 過酷な医師の労働実態 注目浴びる「デジタルヘルス」)。物流にせよ医療にせよ、大きな働き方改革が求められていますが、人手不足が問題ですね。

神様:はい。おっしゃる通りです。

T:少子高齢化が進むこれからの日本の状況を考えると、デジタル化やDXの力だけではなかなか改善し難いようにも思えますが、どうでしょうか?

神様:おっしゃりたいこと、良くわかります。日本の65歳以上の高齢者人口は、1950年以降増加してきました。2040年には第二次ベビーブームで生まれた人たちが65歳以上となり、高齢者の人口比率は34.8%に達すると試算されています。3人に1人以上が65歳以上となるわけです。社会保障費の負担もぐっと増えますし、人材不足の懸念は今よりさらに強まります。デジタル化だけに救いを求めるのは現実的ではありません。

T:2023年で高齢者人口比率は29.1%ですから、すでに「3人に1人が65歳以上」に近い状況にありますね。

神様:その一方、企業の設備投資は増えています。3月に公表された財務省の法人企業統計調査によれば、2023年10月から12月までの国内企業の設備投資の総額は14兆4,823億円となり、10月から12月までの3カ月間の額では過去最高となりました。要因としては、メーカーによる電子部品の生産体制の強化や、通信設備の拡充への投資が増えたことが挙げられます。

T:設備投資が増えている、ということは、雇用や賃金もそれだけ増えやすいということでもありますね。

神様:その通りです。為替相場が円安基調を強めています。国内企業は輸出において価格の優位性を得ることができます。そのため、製造業を中心に企業の設備投資意欲は衰えないと考えられます。厚労省によると、令和6年3月の有効求人倍率は1.28倍となり、前月に比べて0.02ポイント上昇しました。令和6年3月の完全失業率は2.6%で前月と同率でしたが、完全失業者数は185万人で2カ月ぶりの減少となっています。企業にとって、今後は人材の採用難がさらに強まるでしょう。

T:失業者数が減少している中、企業の設備投資が活発で雇用は増えていくのですから、当然そうなりますね。まさに今、企業にとっては「ネコの手も借りたい」状況でしょう。

神様:それは、少し違います。ネコの手も借りたいというのは、「誰でもいいからとにかく人手がほしい」ことの意でしょう。人材採用の難しいところは、「適材適所」を心がけなければならないところです。企業は採用において「誰でもいい」とは考えていません。企業・被雇用者ともに、力を十分に発揮できるような最適なマッチングが実現されることが求められています。

T:被雇用者側から見れば、一見仕事に就きやすいように思えますが、一人ひとりに最適な業界、職種、働き方を見つけるのは簡単なことではありません。そう言えば、最近は「退職代行サービス」の台頭がメディアなどでも紹介されています。これもマッチングの失敗の結果と言えるでしょうか?

神様:退職する要因にはさまざまなものがありますので、何とも言えません。企業としては採用の失敗はできる限り避けたいところです。そのため、企業は自社の魅力を十分に伝えて人材採用を行い、その人材を最大限に活用できるような環境を提供する必要があります。しかし、企業の規模によっては自助努力に限界があるのが現実です。

T:なるほど。

神様:今後は、人材ソリューション企業の活躍がより求められます。人材ソリューション企業は、企業サイドに立った人材斡旋サポートができるだけでなく、被雇用者側に寄り添ったノウハウを持っています。これらをどのように活用できるかがポイントです。企業にとっても雇用される側にとっても、満足のいく結果を得ることは簡単なことではないかもしれません。そこを最大限の効果を生み出すようにサポートしていくのが人材ソリューション企業の役目です。

T:人材難への救いの一手となるか…今後の活躍に期待したいと思います。

(この項終わり。次回6/5掲載予定)

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