第399話 過酷な医師の労働実態 注目浴びる「デジタルヘルス」
株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、都内ホテルのラウンジで投資談義を行っています。
神様:先日は物流の2024年問題(第394話 「物流の2024年問題」本格化 ドライバー不足どう解決する?)を取り上げました。覚えていますか?
T:はい。何も対策を講じない場合、2024年度のトラックドライバー不足は14万人分に上り、ドライバー不足は深刻です。しかし、見方を変えればCO2削減や長時間労働の是正も進められるチャンスであるとも言えるのでした。
神様:実は「2024年問題」は、物流業界だけの問題ではありません。2024年4月から、医師の時間外労働にも上限が設けられました。
T:なるほど。医師にも2024年問題があるわけですね。
神様:時間外労働の上限規制について、もう一度振り返ってみましょう。働き方改革によって、大企業では2019年4月から、中小企業では2020年4月から時間外労働の上限は原則として月45時間・年360時間までとなりました。しかし、上限規制の適用が5年間猶予された業種がありました。それが建設事業、物流業などの自動車運転の業務、そして医師などです。
T:医師の上限は月45時間・年360時間までなのですか?
神様:いえ、違います。勤務医の時間外労働時間については原則として年960時間、救急医療などの特例水準では年1,860時間が上限として定められています。
T:他の業種に比べると長い時間外労働が認められているのですね。
神様:現状、日本の医療は医師の自己犠牲的な長時間労働により支えられています。これは危機的な状況と言えるでしょう。しかし、一方で医療提供体制の確保も重要であり、さらに、医療の質の維持・向上を目的とした知識習得や技能向上のための研鑽を行う必要もあります。技能向上には一定期間の集中的な取り組みも重要です。その結果、このような上限規定となっています。
T:実際のところ、医師の労働時間はどのくらいなのでしょうか?
神様:厚生労働省による医師の勤務実態調査によれば、2022年の時点で時間外・休日の週労働時間が年960時間を超える医師の割合は21.2%でした。そのうち、年1,920時間を超える割合は3.6%でした。
T:年1,920時間、週で80時間以上の時間外・休日労働ですか。とんでもなく過酷な仕事量ですね。
神様:それでも年々減少傾向にあります。上限規制によりさらに改善されていくことが期待されますが、注目されているのは「デジタルヘルス」の活用です。
T:以前もお話があった医療のDX(第341話 アプリで治療する時代へ 期待の医療「DTx」とは?)ですね。
神様:その通りです。デジタルヘルスには、遠隔医療、モバイルヘルスアプリ、ウェアラブルデバイス、そして電子カルテの活用などが含まれます。デジタルヘルス市場は2032年にかけて年平均成長率17.5%で成長すると予測されています。2024年の診療報酬改定では、医療DXも大きなポイントのひとつとなりました。まさに今、デジタル技術によって医療のあり方が大きく変化していく時であると言えるでしょう。
T:それは理解できますが、私が通っている“かかりつけ医”の病院は、いまだに紙カルテですよ。この先本当に医療DXは進むのでしょうか?
神様:国の医療費が増大していく中、厳しい経営環境を強いられながら医療サービスを提供している病院はとても多いです。お金に余裕がない限り、ICTへのコストを最小限にして病院運営を行っているのが現実でしょう。さらに、2021年から2022年にかけて複数の病院がランサムウェアによるサイバー攻撃を受けた事件がありました。現場では厳しいセキュリティの確保も求められています。しかし、見方を変えればこれは変化へのチャンスでもあります。社会全体のメリットのためにも、働き方改革やデジタル技術を活用し、新しい医療のあり方を作っていかなければなりません。
T:確かにその通りですね。今後の動向を注視したいと思います。
(この項終わり。次回5/29掲載予定)
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