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第394話 「物流の2024年問題」本格化 ドライバー不足どう解決する?

2024.04.10

株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、海の見えるカフェで投資談義を行っています。


神様:2024年も4月に入りました。Tさんは2024年4月と言えば何を思い浮かべますか?

T:やはり物流の2024年問題です。トラックドライバーなどの自動車運転業務には、働き方改革法案における労働時間の上限規制に一定期間の猶予が与えられていました。しかし、その猶予期間が終了し、2024年4月からは規制の下での事業運営が求められます。

神様:さすがです。「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」は平成30年に公布され、平成31年4月に施行されました。しかし、長時間労働によって支えられていた物流業界を始めとする自動車運転業務においては実情と乖離があり、猶予期間が設けられました。2024年4月からは時間外労働の上限が年間960時間となります。

T:その結果、もし何も対策を講じなければ、日本の物流が停滞する事態になりかねないということですね。

神様:国土交通省の「持続可能な物流の実現に向けた検討会」によれば、何も対策を講じなかった場合、2024年度の輸送能力は2019年と比較して14.2%不足すると試算しています。これはトラックドライバー14万人分の不足に相当します。さらに、2030年には34.1%の不足に拡大する見通しです。

T:14万人の不足ですか…。その分がこれまでと同様の物流サービスを受けられなくなるということですね。物流業者にとっても損失ですが、消費者や社会全体にとって大きな不利益となりますね。

神様:「何も対策を講じなかった場合」は、そうなるでしょう。これまで政府は「我が国の物流の革新に関する関係閣僚会議」を開催して議論を行い、対策を取りまとめてきました。2023年6月には「物流革新に向けた政策パッケージ」を策定しました。具体的な施策としては、「商慣行の見直し」、「物流の効率化」、「荷主・消費者の行動変容」の3つを策定しています。

T:商慣行というのは、荷待ち・荷役を見直して削減しよう、ということですね。

神様:トラックドライバーは、「荷待ち」と言って荷主の都合で待機を強いられる時間が多く、長時間労働の温床となってきました。「荷役」とは、貨物をトラックなどに積み込む、または降ろすことを言います。これらにかけられる時間が削減されることで、14.2%の不足のうち4.5%を補う改善効果があると試算されています。同様に積載効率を向上させるなどの効率化で6.3%、再配達の機会を削減することで3%、モーダルシフトで0.5%を補うと試算されています。

T:モーダルシフトとは何でしょうか?

神様:モーダルシフトとは、トラックなどの自動車で行われている貨物輸送を、より環境負荷の小さい鉄道や船舶などの輸送手段に転換することを言います。

T:鉄道や船舶を利用することで、これまで長距離をトラックなどで移動していたところを、駅や港までの移動で済むわけですね。

神様:モーダルシフトはドライバー不足を補うだけでなく、CO2排出量の削減においても期待されています。例えば、1トンの荷物を1km運ぶのに、トラックは216gのCO2を排出しますが、鉄道は20g、船舶は43gしか排出しません。国土交通省によると、日本の二酸化炭素排出量のうち、運輸部門からの排出量は17.4%を占めています。運輸部門の中では、旅客自動車が44.3%、貨物自動車は39.8%を占めています。モーダルシフトは、貨物自動車のCO2排出を大きく削減する手段となるでしょう。

T:なるほど。2024年問題は、ドライバー不足という大きな問題に見えますが、見方を変えるとCO2排出削減に貢献できますし、長時間労働の是正も進められます。前向きに取り組むことで、新しい未来が切り開けそうですね。

神様:2024年を乗り越えられたとしても、この問題が解決するわけではありません。しかし、物流DX・GXの推進、標準仕様パレットやタンクコンテナの導入などの効率化、さらに私たち利用者においても、コンビニを利用した受け取りや余裕のある配達日時を指定することによる再配達の削減など、これらの取り組みが一体となって進むことで、2024年問題は明るい未来へと変わっていくと思います。課題解決に関わる企業の活躍の場も増えていくでしょう。

(この項終わり。次回4/17掲載予定)

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