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第395話 「1日茶碗1杯分の食料が捨てられる」食品ロス対策に期待

2024.04.17

株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、都内ホテルのラウンジで投資談義を行っています。


神様:Tさんは「食品ロス」という言葉を聞いたことはありますか?

T:はい。近年、食べ残しや売れ残りなど、まだ食べられる食料を廃棄してしまうことが問題となっていますね。

神様:では、食品ロスがなぜ問題なのか、わかりますか?

T:日本は食料自給率38%(カロリーベース)と、多くの食料を海外からの輸入に頼っています。世界人口が増加し、食糧危機が目前の課題となっている中、その一方で大量の食料が食べられないまま捨てられているのは、非常にもったいない話です。貴重な食料資源を有効活用していかなければいけません。

神様:そうですね。食品ロスの問題は世界的に議論されています。「持続可能な開発目標(SDGs)」では、12番目の目標のひとつとして「2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の1人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食料の損失を減少させる」ことを定めています。日本では、令和元年に「食品ロス削減推進法」が施行され、令和2年3月には基本方針として「食品ロスの削減に関する基本的な方針」が閣議決定されました。

T:意外に感じますが、食品ロスに関する法律が施行され、基本方針が決定したのは最近なのですね。

神様:そうですね。日本が食品ロスの量の推計を開始したのは平成24年度(2012年度)です。令和2年度には、食品ロスの量が522トンとなり、推計開始以来最少となったことが農水省より発表されています。

T:それでは、SDGsの目標である2000年比で半減というのも達成できそうですか?

神様:これまでの食品ロス量の推移を見てみましょう。まず、2000年の食品ロス量がどのくらいであったかと言いますと、「980トン」でした。目標とする量は2000年比で半減なので、「489トン」となります。令和5年に発表された2021年度の食品ロス量は523トンでした。これは、国民ひとり当たり食品ロス量に換算すると1日約113グラムであり、ちょうど茶碗約1杯のご飯の量に近い量となります。


T:毎日茶碗1杯のご飯と同じ量の食品を捨てている、ということですか。

神様:そういうことですね。しかし、ここへ来て食品ロス量の低減が足踏みしていることが気になります。

T:目標まであと34トンですか。2020年はコロナ禍で飲食店などは大きな影響を受けていましたから、食品ロス量も通常より少なかったのでしょうか?そうすると、今後6年間の削減が厳しく感じますね。

神様:確かに、その通りかもしれません。食品ロスは、「生産」→「製造・加工」→「卸・流通」→「小売り・外食」→「消費者・家庭」にわたる各過程で発生します。発生する場所は大きく「家庭系」と「事業系」にわかれます。事業系がわずかに多いものの、家庭から出る廃棄量も全体のほぼ半分を占めています。各家庭それぞれで打てる対策を打っていくことが大切でしょう。

T:まだまだできることがたくさんある、ということですね。

神様:施策の例としては、食品の寄付や食べ残しの持ち帰りの促進に関する措置の具体化などが推し進められています。また、商習慣の見直しも図られています。賞味期限に過敏となっている商流を是正する試みです。実現させるためには、賞味期限を管理するための在庫管理システムが必要となりますので、IoTやAIの活用が期待されます。

T:なるほど。IoTやAIの活用は、食品ロスの削減だけでなく、コストの削減や人手不足の解消などにも貢献できそうですね。

神様:実は、すでに企業ではIoTやAIを用いた取り組みが始まっています。例えば、食品売り場では電子棚札とAIを連動させ、値下げの判断をAIが行い、売上を確保しながら廃棄ロスを防ぐ試みが始まっています。今後の動向に注目しましょう。

(この項終わり。次回4/24掲載予定)

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