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第393話 本格導入された電子帳簿保存法 中小企業のDXは進むか?

2024.04.03

株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、都内の喫茶店でコーヒーを飲みながら投資談義を行っています。


T:3月と言えば確定申告ですが、今年も何とか終わりました。

神様:Tさんも申告しているのですか?

T:副収入があるので、毎年申告しています。最近は申告作業がとても楽になりました。クラウド会計サービスを使えば楽に帳簿や申告書の作成ができますし、マイナンバーカードやe-Taxを利用すれば税務署に行かずに自宅から申告できますので。

神様:まさに、DX(デジタルトランスフォーメーション)の恩恵を感じているようで何よりです。今、日本の税務行政の周辺は”DX真っ盛り”と言えます。確定申告については、マイナンバーカードの利用だけでなく、キャッシュレス納付の推進や還付金の公金受取口座の活用など、利便性がどんどん向上しているところです。今後さらに使いやすくなっていくのではないでしょうか。

T:誰もが使いやすい、申告しやすい仕組みになれば、納税額も増えるかもしれませんね。国にとっては直接的に税収額の向上につながる施策ですから、力が入るのもうなずけます。

神様:それと平行して、事業者へ向けたデジタル化促進施策も進んでいます。例えば、今年1月から改正された電子帳簿保存法が本格的にスタートしました。

T:令和4年の施行から2年間の猶予措置がありましたが、いよいよスタートとなりました。企業ではどのように対応してよいのかわからず、混乱したところもあると聞きます。現在はスムースに移行できているのでしょうか?

神様:令和5年度の税制改正でも制度の見直しが図られ、請求書や領収書等を電子的に授受した場合のみ、取引したデータを必ず電子データで保存しなければならないこととなっています。データの保存には改ざん防止などの対応も必要となりますが、その点については新たな猶予措置も設けられています。

T:次第に皆が使いやすいルールに整備されているということですね。

神様:しかし本質は、企業の取引、会計・経理全体のデジタル化を促進し、事務などの生産性を向上すること。そして、その先にある新たな価値を創出することにあります。いずれはすべての書類の電子保存が必要でしょう。Tさんがデジタル確定申告で利便性を感じたように、最初は運用方針の策定などに混乱しても、対応した後は今までにない価値を感じるはずです。

T:これを機に日本企業のDXが進むことを期待したいですね。

神様:近年の受託システム開発の四半期別売上高を見ると、拡大傾向にあることがわかります。しかし、以前お話したように中小企業を中心に十分にDXが推進されているとは言えません(第379話 日本のDX人材不足を解消するには?貢献できる企業とは?)。現在、一定規模以上の企業では法人税などの電子申告が義務付けられていますから、会計帳簿は電子化されています。しかし、社内での会計処理においては、紙の書類でやり取りされていることが多々あります。

T:そういった企業がどのように取引書類の電子化を進めていくのかが今後の課題ですね。

神様:「DX白書2023」によれば、2022年度において、全社でDXに取り組んでいる企業の割合は米国では68.1%であるのに対し、日本では54.2%でした。従来の製品やサービスを危機にさらすことなく、DXによる変化を同時進行で推進することに対する困難が障壁となっているようです。

T:逆に言えばDXを普及させる余地がまだ大きいとも言えますが、この機会に日本のDXがさらに進んでいくためには何が必要でしょうか?

神様:DXをサポートする企業の存在が不可欠です。それらの企業が中小企業の経営者に寄り添っていかに課題解決に取り組めるか、サポート側の企業にとってはビジネスチャンス拡大の機会とも言えるでしょう。

(この項終わり。次回4/10掲載予定)

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