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第392話 増える研究開発費「研究開発支援ビジネス」に注目集まる

2024.03.27

株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、公園を散歩しながら投資談義を行っています。


神様:総務省が実施している「科学技術研究調査」によると、日本の2022年度の科学技術研究費の総額は20兆7040億円となり過去最高となりました。2年連続で日本の研究開発費は増加基調にあると言えるでしょう。

T:「研究開発」とは、要するに「R&D(Research and Development)」ですよね?基礎研究・応用研究・開発研究があり、企業が新製品や新事業を創出するために行う活動ですね。

神様:おっしゃる通りです。企業以外にも、大学や非営利団体・公的機関も研究開発を行います。2022年度の研究開発費を見ると、企業は全体の73.1%を占め15.1兆円でした。大学等は18.6%を占めて3.8兆円。非営利団体・公的機関では8.4%を占めて1.7兆円でした。

T:こうして見ると、企業による研究開発が圧倒的に多いですね。

神様:研究開発費は、一部を除いてすべて費用として計上されなければならないと定められています。企業にとっては収益の圧迫要因です。しかし、研究開発を成功させれば新たなビジネスチャンスとなりますし、新しい事業が期待できます。

T:その研究開発費が増加傾向ということは、新事業の創出に向けた動きが多くなっているということですね。

神様:そう言えるでしょう。企業の分類別研究開発費の推移を見てみましょう。製造業と非製造業の割合では、製造業が9割、非製造業が1割となっています。製造業の中では、EV(電気自動車)開発などへ力を注ぐ輸送用機器が首位です。

T:そう言えば、昨今は日本でのAI開発が活発です。日本の独自開発による日本語でのAI開発が求められており、日本企業や国の生産性向上に寄与すると見られています。これも研究開発に当たりますね。

神様:政府は戦略的に取り組むべき基盤技術として、AI、バイオテクノロジー、量子技術の3分野を定めています。2022年度の研究費では、AIは前年度比で56.3%増となる2725億円、バイオテクノロジーは前年度比で55.1%増となる3850億円、量子技術は前年度比で13.2%増となる1322億円が使用されました。

T:AI開発の伸びが大きいですね。期待の高さが伺えます。バイオテクノロジーの伸びも大きいですね。

神様:3分野の今後の伸びに注目しましょう。さて、研究開発は「イノベーション」の創出とも深く関わりますが、多くの日本企業ではイノベーションの創出に苦戦している状況です。戦後の日本は、世界を席巻するような発明を生み出しイノベーションを成し遂げてきました。しかし、現在は世界においてそのような新たな発明を生み出す余地が少なくなっているとも言われています。

T:イノベーションと言えば、米国のGAFAに代表されるような巨大IT企業を思い浮かべます。日本にもそのような企業が数多く登場する時代が来るのでしょうか?

神様:道半ばと言わざるを得ないでしょう。もともと日本企業は、他先進国に比べてリスクの伴う投資や研究開発、新製品・サービスの開発などの取り組みに対して消極的な面がありました。しかし、現在の日本は少子高齢化を始めとする社会課題の解決が迫られています。複雑で取り組むことが困難な社会的・経済的な課題を解決するためには、一企業や大学等の単独でなく、地域で産官学が連携して立ち向かう必要があるでしょう。

T:企業においては、これまで嫌っていたリスクに対してどのように取り組むかが求められますね。

神様:企業が研究開発、製品化、事業化へとつなげるためには障壁が立ちふさがります。例えば、研究成果が出たとしてもコストが高く大量生産に向かない場合があります。競合製品に打ち勝ち、自社の収益に貢献する製品へ結びつけることが求められるのです。

T:それを実現することが難しいのでしょうね。

神様:今後は研究開発を収益に貢献する製品に結びつけるための”研究開発援助ビジネス”が注目されると考えます。成果を生み出している研究開発にどのような企業が関わっているのか、一度調べてみると良いでしょう。

(この項終わり。次回4/3掲載予定)

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