第398話 国産旅客機 失敗に負けず「2035年以降で実現」目指す理由
株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、公園を散歩しながら投資談義を行っています。
神様:今年のゴールデンウィークは各地で大変な人出だったようですね。
T:私も家族で近場に外出しましたが、どこも大賑わいでした。訪日外国人客も多く、観光地ではさらに混雑していたのではないでしょうか。
神様:報道を見ると、人出は昨年並みのところが多いようです。一方で訪日外国人観光客数は伸びています。ゴールデンウィーク前の数値ですが、日本政府観光局が4月17日に公表した2024年3月の訪日外客数は、前年同月比で69.5%増となる308.1万人となりました。これは、コロナ禍前の2019年3月と比べても11.6%増であり、単月としては過去最高を更新し初めて300万人を突破しました。
T:コロナ禍前を超えたということですか?それは驚きです。
神様:国別に見ると、中国からの観光客も増えてきてはいますが、押上げ要因としては東アジアでは台湾、東南アジアではフィリピン、欧米豪・中東地域では米国などで訪日外客数が増加したことが挙げられます。その他にも多数の国で過去最高を記録していることが特徴です。
T:円安の影響もあるのでしょうね。ゴールデンウィーク中の人出の発表も楽しみです。
神様:これに関連する産業に目を向けてみましょう。旅客需要の回復に伴い、民間航空機の運航が拡大傾向をたどると期待されています。日本航空機開発協会によれば、世界のジェット旅客機の運航機数は2042年末には4万527機となり、2022年末の2万5,075機(一部保管機を含む)から拡大すると予測しています。実は今、日本国内では国産旅客機の実現が期待されています。
T:しかし、日本ではつい最近国産ジェット機の開発で失敗していたはずですが。
神様:おっしゃる通りです。2008年4月から三菱重工による国産初のジェット旅客機である三菱スペースジェット(MSJ)の開発が行われてきました。しかし、2020年に開発は中止され、多くの課題を残す結果となりました。経済産業省は2024年4月、その失敗を教訓として「2035年以降に国産旅客機の完成機事業を創出すること」を目指し、関連する民間企業の開発や取り組みを支援する新たな航空機産業戦略を策定しました。
T:一度失敗しても負けずにチャレンジしていく理由は何でしょうか?
神様:先ほど述べたように、世界の航空機需要は今後伸びていきます。航空機は高い信頼性や環境面の技術革新が要求されます。部品やサプライチェーンなどの産業の裾野も広く、経済安全保障上の重要性が高い分野です。さらに、アジア地域での需要が増えていることを踏まえた市場環境の変化、カーボンニュートラル達成へ向けた取り組み、デジタル技術を用いた開発の革新など、今の航空機産業にはさまざまな変化が訪れています。この機会をとらえて、国際連携を進めながら旅客機の国産化を促し、基幹産業として発展させることを狙いとしています。
T:なるほど。航空機が戦略的に重要であることがよくわかります。
神様:日本には、民間航空機の機体やエンジンなどの主要部品を手掛けるサプライヤーが多く存在しています。官民共同で完成機の実現に向けて取り組むことで事業リスクを分散しながら、海外OEM(Original Equipment Manufacturing)主導のビジネス構造からの脱却を目指すには、今がチャンスです。
T:そう言えば、航空機産業に近い業界である宇宙産業では、日本の探査機が月面への着陸を成功させるなど、目覚ましい活躍が見られます。今後は米国主導の有人月探査「アルテミス計画」で日本人が月面に着陸する計画も進められています。日本の技術や産業を育てていくチャンスが訪れていますね。今後の成功に向けてしっかり応援したいと思います。
(この項終わり。次回5/22掲載予定)
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