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第397話 「モア・ザン・ムーア」へ進む半導体 後工程の重要性増す

2024.05.01

株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、海の見えるカフェで投資談義を行っています。


神様:今日は半導体の話をしましょう。以前、「ムーアの法則」( 第372話 2023年はマイナス成長へ 世界の半導体市場動向を見る )について尋ねたのを覚えていますか?

T:はい。ムーアの法則とは、米Intel社の共同設立者であるゴードン・ムーア氏が1965年、「18カ月ごとにトランジスタの集積密度が倍増する」と提唱したことから生まれた法則・経験則ですね。そして、ムーアの法則に則った半導体の進化、つまり微細化も、限界に近づきつつある、ということでした。

神様:その通りです。半導体は微細化するほど高性能となります。微細化を追求する開発姿勢は「モア・ムーア」と呼ばれていますが、これ以上の微細化が難しくなれば、今度は他の方法で性能を高める方法を模索する「モア・ザン・ムーア」と呼ばれる開発が進められます。

T:モア・ザン・ムーアですか。例えば、どんな方法があるのでしょうか?

神様:2次元の平面上の開発に限界が来れば、次は2.5次元や3次元において高密度で半導体を集積し、性能を高める試みがなされています。

T:なるほど。3次元ということは、要するに回路を横に並べるのではなく縦に積み上げていく、ということでしょうか。

神様:そうなります。この場合のモア・ザン・ムーアでは、半導体の集積を平面に詰め込むのではなく、縦方向に積み増す方法を言います。このようにして、まだまだ半導体の性能を向上させることができると考えられています。Tさんは、半導体製造の工程がどのようなものか、ご存知ですか?

T:確か、「前工程」と「後工程」に分かれるのですよね?

神様:その通りです。半導体製造は大きく分けると、シリコンウエハに回路を形成する前工程と、シリコンウエハからチップを切り分け、半導体を完成させる後工程があります。そのうち、いかに回路の線幅を狭められるか?という微細化に関わるのは、前工程とされてきました。つまり、半導体製造市場の重要性は前工程に偏重していたとも言えます。

T:半導体製造企業によって、前工程が得意な企業や後工程が得意な企業がありますよね。これまでは前工程が脚光を浴びていたわけですね。

神様:ところが、ここへ来て後工程が脚光を浴び始めています。例えば、”モア・ザン・ムーア”において「チップレット技術」と呼ばれる技術が注目されています。これは、大規模回路を複数の小さなチップに分け、インターポーザと呼ばれるチップ間をつなぐ基板に乗せて大規模なパッケージにする技術。チップレット技術は、これまでの製造方法に比べてコストが低減し、性能が高くなると考えられています。そしてこの技術は、後工程に属しています。場合によっては、前工程と後工程の中間という意味で「中工程」と呼ばれることもあります。

T:なるほど、面白いですね。これまで前工程が脚光を浴びていたところが、技術的な限界が近づくと今度は後工程が注目されるようになったということですか。ということは、後工程が得意な企業が注目されるわけですよね。

神様:おっしゃる通りです。後工程の重要性が増すにつれ、後工程を手掛ける企業においては、技術、装置、材料の需要が高まることが考えられます。

T:後工程メーカーにとってはチャンスですね。

神様:WSTS(世界半導体市場統計)によれば、2024年は半導体市場が回復する見込みです。また、SEMI(国際半導体製造装置材料協会)による半導体製造装置の市場予測を見ると、2025年は2024年よりさらに伸びると予想されています。今後は半導体製造においては、重要性が増す後工程にも注目していきましょう。

(この項終わり。次回5/15掲載予定)

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