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第403話 電力需要、減少から拡大へ 「エネルギー基本計画」の行方に注目

2024.06.19

株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、都内の喫茶店でアイスコーヒーを飲みながら投資談義を行っています。


T:全国的に厳しい暑さの日が増えてきました。電気代の値上げは私たちの生活にどれほどの影響となるか…。

神様:Tさんは電気代の動向が相当気になるようですね。

T:そりゃそうですよ。物価高の中で電気代の値上げは家計に大きく響きますから。

神様:お気持ちはよくわかります。しかし、目前の電気代も大切ですが、将来のエネルギー問題も重要です。6月初旬には「エネルギー白書2024」が公表されました。今年はエネルギー問題にとって大事な年です。5月15日、資源エネルギー庁では「総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会」が開催されました。この会合のこと、ご存知ですか?

T:いいえ、初めて聞きます。

神様:会合では、日本の中長期的なエネルギー政策の方向性を示す「第7次エネルギー基本計画」の策定について話し合われます。前回、第6次エネルギー基本計画が策定されたのが2021年でした。3年ぶりに計画を見直すこととなります。

T:この3年間、世界の情勢は大きく変化しましたね。2022年2月に始まったロシアのウクライナ侵攻などの影響でエネルギー価格は高騰しています。地政学的リスクの高まりから、エネルギー安全保障という言葉も聞かれます。ここで大きな方針変更はあるのでしょうか?

神様:これからの議論が待たれるところですが、すでに論点は挙げられています。来年2025年11月にはCOP30が開催されることから、政府は2025年2月までには2035年の次期温室効果ガス排出削減目標を出すと見られます。これまで掲げられていた「2030年目標」がどのように変化するのか注目されるでしょう。

T:2030年目標では、再生可能エネルギーの電源比率を36~38%とする目標を掲げているのでしたね。

神様:はい。2022年時点で、日本の火力発電はいまだ73%もの割合を占めています。2035年目標で火力発電がどの程度の割合とされるのか、原子力発電の割合はどの程度となるのかも注目ポイントとなりそうです。ここで、日本国内の電力需要を見てみましょう。電力需要は、コロナ禍で一時需要が拡大した以外は2012年以降おおむね右肩下がりの傾向にありました。特に2023年から2024年にかけては、人口減少や節電・省エネなどにより、家庭部門の減少が見込まれています。

T:電気代の高騰もありますし、今後も電力需要は減少していくのでしょうね。

神様:ところが、です。電力広域的運営推進機関は毎年「全国及び供給区域ごとの需要想定」を公表しています。2023年度以前の公表では、日本の電力需要は「緩やかに右肩下がりの減少」を続けていく見通しとしていました。しかし、2024年度版では2023年から2024年あたりを底に2033年度あたりまで「右肩上がりの増加」に変化しています。

T:今後の電力需要の見通しが減少から増加に変化したということですか?

神様:はい。データセンターや半導体工場の新増設などにより産業部門の電力需要の増加が見込まれることが要因です。人口減少や節電・省エネなどの影響はあっても、生成AIの普及やDXの進展によるデータ処理・通信量の増大や工場新設など、経済成長による影響が勝ると見込まれています。

T:なるほど。

神様:電力需要が拡大していく中で、脱炭素への取り組みをどう進めていくか。再生可能エネルギーや水素などの新エネルギーの供給、さらにCO2を有効利用するCCUS・カーボンリサイクル技術などの活用、そして電力の安定供給と脱炭素を同時に実現できる電源として見直されている原子力発電。エネルギー源の多角化を進めることが、日本にとって重要となるでしょう。

T:エネルギー・脱炭素関係の企業にとっては大きなビジネスチャンスとなるかもしれません。動向に注視していきたいと思います。

(この項終わり。次回6/26 掲載予定)

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