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第402話 円安が影響?日本企業の国内設備投資、拡大へ期待高まる

2024.06.12

株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は都内ホテルのラウンジで投資談義を行っています。


神様:日本企業の設備投資が好調です。財務省は6月3日、2024年1月から3月期の法人企業統計調査を公表しました。それによると、2024年1月から3月期の設備投資額は12期連続の増加で17兆6,628億円、過去2番目の金額となりました。

T:先日のお話で3月に公表された法人企業統計調査では2023年10月から12月までの設備投資額が14兆4,823億円となり、10月から12月までの3カ月間の額では過去最高となったのでした(第400話 ネコの手も借りたい?人手不足で人材の採用難強まる)。

神様:日本企業の設備投資(ソフトウェアを除く)はコロナ禍で低迷していましたが、ここへ来て復調が見られます。特に国内での設備投資は目を引きます。2023年10-12月期の設備投資額の伸び率を見ると、前年同期比で国内が29.7%の増加であり、海外現地法人が8%の減少となっています。

T:国内の設備投資額が増加しているのは、円安が要因でしょうか?

神様:もちろん円安も要因ですが、それだけではありません。もともと日本の製造業は企業のグローバル化に沿って海外進出を強めていました。製造業全体において、海外で現地生産をする企業の割合を見ると2013年度の71.6%がピークでした。その後は2023年度見込みが65.2%、2028年度見通しは63.4%と減少基調となっています。特にコロナ禍によるサプライチェーンの混乱は、これまでの企業のあり方を大きく見直すきっかけとなりました。

T:コロナ後は経済安全保障の観点からも、海外での生産から国内での生産への転換が重視されるようになってきましたね。

神様:デジタル化の加速も要因の一つです。省人化やDX化により、国内でも効率的な生産ができるようになりました。これらの要因が企業の国内回帰を促進し、国内への設備投資意欲が高まっていると言えます。ところでTさん、企業の設備投資はなぜ行われるのか、わかりますか?

T:改めてそう問われると、なんと答えればいいでしょうか?設備投資は企業の未来の成長を作るものであると思います。新しい事業であったり、既存の事業の改革であったり、または自社の強みの強化かもしれません。とにかく、企業をさらに成長させるために投資を行って「種まき」をすることが大切なのだと思います。

神様:おっしゃる通りです。コロナ禍を乗り越え、経済活動が回復した今、国内での設備投資が活発になっているのは、日本経済に「回復から成長へ」と変化の兆しが見えているとも言えるでしょう。

T:なるほど。

神様:サプライチェーンの脆弱性を軽減するために、国により企業へ設備投資を支援する制度もあります。特にEVや半導体など国家戦略としても重要な分野では、多くの投資が行われています。

T:そう言えば、九州では半導体の受託生産で世界最大手の台湾・TSMCが熊本に進出したことにより、多くの国内半導体企業が周辺に集まっていると聞きます。

神様:もともと九州は1960年以降で半導体企業による工場立地が進み「シリコンアイランド」と呼ばれていました。TSMCの熊本進出をきっかけに、半導体企業による投資もさらに活発化しています。

T:シリコンアイランドの復活、と言うことですね。

神様:さて、政府は国内投資が今年度は100兆円にまで拡大すると見込んでいます。また、現在を日本経済が成長型経済に移行する正念場と捉え、2027年に国内投資額115兆円の目標を掲げ、6月からAIやロボットを活用した中小企業の省力化投資支援をスタートしています。大企業から中小企業まで、多くの企業で投資が活発化することが期待されます。

T:今後の国内設備投資の拡大に期待したいと思います。

(この項終わり。次回6/19掲載予定)

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