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第408話 6月日銀短観で目立つ製造業の強気投資 DX拡大に期待

2024.07.24

株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、公園を散歩しながら投資談義を行っています。


T:7月に入り、日経平均株価が何度も最高値を更新しています。物価高が続く中、力強い日本経済へ成長するための追い風となるでしょうか。

神様:日本株は今、長期上昇相場の局面にあります。今後も海外投資家による日本株への資金流入が続くでしょう。

T:円相場の変動が気になりますが、今後も期待が持てそうですね。

神様:7月8日に5月の毎月勤労統計が公表されました。実質賃金は前年同月比で1.4%減となり、26カ月連続での減少となりましたが、一方で所定内給与は前年同月比で2.5%増え31年4カ月ぶりに高い伸び率となりました。これは、「5.1%」という今年の春闘での高い賃上げ率が反映される途上にあると見ていいのではないでしょうか。

T:まさに、賃金と物価の好循環が生まれようとしていますね。

神様:それを確認するにはもう少し時間が必要ですが、期待したいところです。さてTさん、目の前の株価に一喜一憂するのもいいですが、投資にとっては、10年後、20年後の日本を見据えることがとても重要です。日銀は7月1日、6月の全国企業短期経済観測調査(短観)を発表しました。業況判断DIを見ると、大企業の製造業では2024年3月調査の11から13へと伸び、中堅企業の製造業では2024年3月調査の6から8へと伸びています。

T:業況判断DIとは、企業の収益を中心とした業況について指数化したものですね。「良い」と判断した企業の割合から「悪い」と判断した企業の割合を引いたものですので、単純に考えれば、「良い」と判断した企業が増えているということですね。

神様:その通りです。そして今回のポイントは、設備投資額です。特にソフトウェア投資額では、大企業の製造業が2023年度の11.0から2024年度(計画)の19.1へ大きく伸びています。中堅企業・中小企業の製造業も含め、2024年度の計画が多くの製造業で上方修正されており、企業の強気な設備投資の姿勢が示されたと言えるでしょう。

T:ソフトウェアを含む設備投資と言えば、やはりDX(デジタルトランスフォーメーション)関連でしょうか。

神様:おっしゃる通りです。少子高齢化による就労人口の減少、技術伝承難による後進育成の遅れなどで、製造業の生産性の悪化が問題となっています。工程をデータ化して管理する、既存のノウハウや属人化していた技術を企業に蓄積させるなど、DXを導入することで解決を図る動きが活発化しています。それがITソフトウェア投資の増加傾向につながっています。

T:経済安全保障の観点や円安進行などを背景とした製造業の国内回帰も進んでいますし、今後もしばらく続きそうですね。

神様:新たに導入される生産システムでは、通信機能が組み込まれ、電気設備や空調管理などを含めた生産現場を包括的にデータ管理する例も増えています。

T:IoTによる管理ですね。ソフトウェアだけでなく、こういったハード面も含めたビジネスチャンス拡大が期待されますね。そう言えば、最近IT関連の報道ではランサムウェアなどによるサイバー攻撃被害が相次いでいます。個人情報などの漏洩も発生しており、サイバーセキュリティの重要性を感じています。

神様:10年後、20年後はさらにデジタル化が進み、現実とバーチャル世界の境界もさらにあいまいになっていくでしょう。AIの活用、IoTやデータ活用など”攻めのDX投資”が必要であるほど、サイバーセキュリティという”守りの投資”もより重要になっていきます。これは製造業だけの話ではありませんね。

T:確かにそうですね。

神様:いずれにしろ、製造業関連DXの設備投資が非常に活発になっています。今後のビジネスチャンスの拡大に期待しましょう。

(この項終わり。次回7/31掲載予定)

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