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第414話 キーワードは「消費電力削減」 需要高まるSiC半導体に注目

2024.09.04

株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、公園を散歩しながら投資談義を行っています。


T:9月に入り、少し秋の気配を感じるようになりました。2024年も後半に向かっていきますが、今後の経済の動向はどうでしょうか?

神様:8月15日に発表された2024年4-6月期の実質国内総生産(GDP)速報値は、前期比年率で3.1%増と2四半期ぶりのプラス成長となりました。収入の動きを示す雇用者報酬も実質で前年同期比0.8%増となり、2021年7-9月期以来となる、およそ3年ぶりのプラス圏浮上となりました。これらの指標を見ると、年末に向けて国内景気を取り巻く環境は改善しつつあると言えるでしょう。

T:東京株式市場も一時の急落から回復しつつあるようですし、年末に向けて日本株が再び最高値を更新するような局面もあるのでしょうか?

神様:海外の長期投資家は、日本株への買い姿勢を維持しているようです。中東情勢の緊迫化による地政学リスクや日米の金融政策、米景気などに不透明感を抱えてはいますが、国内経済のファンダメンタルズに大きな問題はありません。可能性は大いにあるのではないでしょうか。

T:それは楽しみです。

神様:さて、久しぶりに半導体のお話です。ここ最近、半導体素材においてSi(シリコン)ウェーハに取って代わる存在として、SiC(シリコンカーバイド)が注目されています。

T:ウェーハとは、半導体本体のもととなる素材のことですよね?

神様:そう考えて良いでしょう。これまで、半導体素材にはシリコンが多く用いられてきましたが、SiC、つまりシリコンカーバイドまたは炭化ケイ素の存在感が増しています。SiCウェーハの市場規模を見ると、2024年に10.1億ドルの予想ですが、5年後の2029年には24億ドルとなり、年平均で19%の成長が見込まれています。

T:高い成長率ですね。SiCにはどんな特徴があるのでしょうか?

神様:従来の半導体と比較して消費電力に特徴があります。SiCは、シリコン(Si)と炭素(C)で構成される化合物半導体材料です。従来のシリコンよりも電子が存在することのできない領域である「バンドギャップ」が広く、絶縁破壊への強度が10倍となり、動作時のロスが少なくなる特徴があります。また、熱伝導率が高く放熱による電力損失を抑えられるため、従来より低い消費電力を実現できるのです。

T:消費電力を削減できる、環境に優しい半導体ということですね。そう言えば、以前に日本の電力需要の話( 第403話 電力需要、減少から拡大へ 「エネルギー基本計画」の行方に注目 )が出ました。日本の電力需要は2024年あたりを底に、2033年度あたりまで「右肩上がりの増加」に変化していく、というお話でしたね。

神様:はい。テレワーク率の減少や節電・省エネの推進により、電力需要は下がる傾向にありました。しかし、今後はデータセンターや半導体工場の新増設などがあり、電力需要は右肩上がりで上昇していくと見られています。

T:カーボンニュートラルの実現に向け、消費電力の削減は重要なキーワードだと思います。主にどんな機器で用いられるのでしょうか?

神様:消費電力が低い半導体が用いられると、スマートフォンやウェアラブルデバイスなどの電子機器にとってはバッテリー寿命が延びることにつながります。特にスマートフォンでは、バッテリー容量を消費しやすい機器などを搭載することが多くなっていることから、SiC半導体が活躍する場となっています。電気自動車(EV)やハイブリッド車(HV)の航続距離を向上させたい自動車メーカーなどからの需要も高まっていますね。また、生成AI普及でニーズが高まっているデータセンターにおいてもSiC半導体の引き合いが強いです。

T:EVなどで重要な役割を果たすパワー半導体( 第373話 世界で加速するEVシフト 「パワー半導体」の市場拡大に期待 )は、日本の強みでもあります。日本の関連企業にとってはチャンスですね。

神様:SiCパワー半導体のトップサプライヤーは海外メーカーですが、半導体の素材や製造装置を手掛ける企業など、日本には製造工程で活躍する企業が多く存在しています。今後の業績貢献を期待し、しっかり注目してみてください。

(この項終わり。次回9/11掲載予定)

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