第415話 増加する日本の空き家 「都市のスポンジ化」防ぐには?
株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、都内ホテルのラウンジで投資談義を行っています。
T:少子化の深刻化が話題です。厚生労働省は8月30日、2024年1月から6月までの累計の人口動態統計を公表しました。今年1月から6月の出生数は、前年から5.7%減となる約35万人でした。年間で70万人を割る可能性もありそうです。
神様:昨年の年間出生数が72万7277人でしたから、70万人割れとなると昨年に比べて2万人以上の出生数減少となります。少子化の影響は様々な場所に現れています。Tさんは、日本の「空き家」の数はどのくらいあると思いますか?
T:そう言えば、最近空き家が増えている話をよく聞きますね。しかし、どのくらいあるのかわかりません。そもそも日本の住宅の総数はどのくらいあるのでしょうか?
神様:総務省によると、2023年10月現在で日本の総住宅数は6502万戸です。これは2018年と比べて4.2%の増加であり、過去最多です。日本の住宅数は一貫して増え続けているのが現状です。
T:そんな中、空き家も増えているのですね。実際、空き家はどのくらいあるのでしょうか?
神様:2023年10月現在で、空き家は900万戸です。これは2018年と比べて51万戸の増加であり、こちらも過去最多です。空き家もこれまで一貫して増加し続けています。

T:総住宅数が増え続けていて、空き家も増え続けている。なんだか不思議な印象がありますが、どういうことなのでしょうか?
神様:空き家にも種類があるのですが、一つ目は別荘などの二次住宅、二つ目は売却用の空き家、三つ目は賃貸用の空き家です。中でも賃貸用の空き家は、大きな割合を占めています。
T:なるほど。賃貸用ということは、家を借りる人が現れれば空き家ではなくなるわけですね。
神様:もう一つ、二次住宅、売却用の空き家、賃貸用の空き家をのぞいた空き家があります。例えば、転勤や入院などによって長期間居住世帯が不在の住宅、または建て替えなどのために取り壊すことになっている住宅などです。最近はこのような種類の空き家が増加しており、2023年には空き家率で5.9%に達しています。

T:なるほど。要するに、利用用途がないまま空き家になっている住宅が増えているのですね。
神様:空き家の増加に伴う人口密度の低下のことを「都市のスポンジ化」と言います。人口密度が低下することで生活サービスが縮小・撤退し、公共インフラの維持管理も非効率化します。それは地価の下落や治安の悪化にもつながりやすく、都市の衰退が加速する結果となるでしょう。
T:つまり、空き家に適切に対応することが都市を守ることにもつながってくるわけですね。
神様:2015年には「空家等対策の推進に関する特別措置法(空家法)」が施行されました。同法では、使用目的のない空き家のうち、緊急性に鑑みて周囲に著しい悪影響を及ぼす空き家のことを「特定空家」と定めています。特定空家に指定されると、最終的には行政代執行で取り壊しとなります。
T:倒壊の危険がある建物を放置するわけにはいきません。しかし、何か別の有効活用ができると良いのでしょうね。
神様:まさにその通りです。2023年12月には事前の管理や有効活用を促す目的で空家法が改正されました。特定空家になってからの対応では遅いとの考えから、使用目的のない空き家を特定空家にしないための防止策も盛り込まれています。
T:そう言えば、最近はリノベーションといって中古住宅の改修が多く行われています。今後も空き家の改修や再活用などが活発化していくのでしょうね。
神様:少子高齢化が進展し、空き家率のさらなる上昇も想定される状況のもと、これからますます空き家問題に対して解決策を持つ企業の活躍が期待されることになるでしょう。
(この項終わり。次回9/18掲載予定)
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