第466話 ”夢の電池”実用化まであと一歩 リチウムイオン電池市場に注目
株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、下町の甘味処でお茶を飲みながら投資談義を行っています。
T:9月7日、石破総理は自民党総裁辞任を表明しました。米国関税措置に関する交渉に区切りがついたことなどを理由としています。日経平均株価はその後上がっているようですね。
神様:日経平均株価は9月18日に終値として初めて4万5000円を上回り、史上最高値を更新しました。米連邦公開市場委員会(FOMC)で米連邦準備理事会(FRB)が利下げの再開を決定したことで、米国経済の先行きに対する不透明感が和らいだことも大きいでしょう。石破総理の自民党総裁辞任表明では、財政拡張的な次期政権が誕生するとの思惑も高まっています。総裁選に向けて、次期候補は自身の政策方針を前面に打ち出してくると想定されます。次期総裁が決まるまで、各候補の政策方針への期待が日本株を支えていくでしょう。
T:財政拡張、つまり政府が支出を増やす。または、減税することが期待されますが、各候補者の政策に注目ですね。
神様:さて、今日はリチウムイオン電池についてお話しましょう。リチウムイオン電池は、充電することで繰り返し使える電池です。負極からリチウムイオンが放出されることで電気が流れ、負極にリチウムイオンを集めることで充電します。電気を貯めて必要なときに使うことができる「蓄電池」のひとつです。
T:リチウムイオン電池と言えば、発明者のひとりである旭化成名誉フェローの吉野彰さんが2019年にノーベル化学賞を受賞しました。今やスマートフォンやノートパソコンなどのモバイル機器には欠かせない電池となっていますね。
神様:他の蓄電池とは異なり、小型で軽量、大容量のバッテリーを作りやすい点が大きな特徴です。今後は電動自動車で幅広く利用されるほか、通信基地、太陽光発電などの産業機器でも利用される機会が増えていくでしょう。
T:太陽光発電は再生可能エネルギーの筆頭として、各企業や家庭に幅広く導入されています。リチウムイオン電池の活躍の場もさらに広がっていくでしょうね。

神様:現在は電池容量をさらに大きくするための研究が進められています。電池の負極を従来のカーボンからシリコンに変更することで容量が10倍以上に増えました。しかし、大容量化にも限界が近づいているようです。充電時に膨張することで劣化するため、膨張を抑えることも課題となっています。
T:膨張と言えばですが、最近はリチウムイオン電池の発火事故が相次いでいますね。モバイルバッテリーなどを処分する際に間違った処分の仕方をすることで、ごみ処理場などで火災が発生するケースが多いようです。報道でも発火しないための対策などをよく目にするようになりました。
神様:リチウムイオン電池の弱点として、熱や衝撃に弱い性質が挙げられます。高温の場所に置かない、電池に強い衝撃を与えないなどの注意が必要です。
T:何か効果的な対策や新技術が開発される予定はあるのでしょうか?
神様:リチウムイオン電池が熱や衝撃に弱い要因として、電池の中の電解質が液体であることが挙げられます。液体電解質のリチウムイオン電池でより熱や衝撃に強い電池も開発されつつあるようですが、期待されるのは、次世代電池であり”夢の電池”とも言われる「全固体電池」の実用化です。全固体電池は電解質が固体であるため、熱や衝撃にも強く、性能も飛躍的に高まるため、電気自動車(EV)などで多く用いられることが想定されています。自動車メーカーを中心に開発競争が繰り広げられています。
T:性能が高く安全に使用できるリチウムイオン電池、実用化が待ち遠しいですね。
神様:全固体電池では日本が研究開発でリードし、日本からの実用化が期待されるところですが、近年は欧米や中国との競争が激化しています。実現に向けて急ピッチで開発が進められています。ここ数年が大きな注目の年となるでしょう。
T:実用化まであと一歩と言ったところでしょうか。日本企業の活躍に期待します。
神様:さて、グローバルインフォメーションによると、リチウムイオン電池の世界市場規模は2024年の1,178億ドルから2029年には2,217億ドルに達すると予測されています。この間、年平均成長率は実に13.5%です。今後のリチウムイオン電池市場の成長に期待しましょう。

(この項終わり。次回10/1掲載予定)
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