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第88話 会社の『進化』を見極める(その3)

2018.01.31

株の神様の声が聞こえるというTさん。投資の心構えやコツを、時折神様から伝授されています。新たな年のスタートに、より長い目で将来を見通して見ようと、会社の中長期的な『進化』について話しています。神様は、進化できる会社を見極めるには3つのポイントがあり、1つめは創業の精神に沿った、あるいは創業の精神自体を進化させた事業展開をしているか、でした。「2つめのポイントは自分で考えてみなさい」と神様からTさんが質問されています。


T:進化できる会社を見極める2つ目のポイントは、そうですね…いくら創業の精神が立派でも、それを実現できる裏付けというか力がなければ「絵に描いた餅」になってしまいますから、そのあたりの力を持っているかがポイントになってくる気がします。

神様:さすがですね、ほぼ正解です。進化できる会社を見極める2つ目のポイントは、何らかの『強み』を持っているか、です。さらに突っ込んで言うと、経営陣が自社の強みを正しく自覚しているか、その『強み』を生かした事業展開を図っているか、そして創業の精神と『強み』がマッチしたものなのか、といったことです。投資する側はこの点をよく観察・分析しなければなりません。

T:ソニーで言えば、「ひとのやらないことに挑戦し、社会に貢献する」という創業の精神を実現しうる、チャレンジ精神と社会貢献の思いを持った技術者がおそらく初期の『強み』だったわけですよね。他社に比べても。

神様:そうです。彼らの意思や技術力という『強み』があったからこそ、次々と革新的な製品を輩出できたと言えます。また、会社が発展して「電気製品にとどまらず、開拓者精神を発揮して新しい分野にも挑戦し、世界に通用する企業グループになっていこう」と創業の精神を進化させたステージでは、守りでなく攻めのマインドを持ち語学を含め海外の知見がある人材が集っていたと思われます。それがグローバル展開力という『強み』になっていたわけです。

T:経営陣がいくら「開拓者精神だ!」「海外だ!」と鼓舞しても、保守的で国内のビジネスしか知らない社員ばかりだと事業は成功しませんものね。

神様:あなたが『進化した』会社の事例に挙げていた富士フイルムの1934年創業時の思いは「写真フィルムの国産化」です。当時、わが国ではフィルムは全く未開発の分野であり、しかも写真フィルムというのは、「化学の芸術品」と言われるほど繊細で難易度の高い製品だったのです。写真フィルムは髪の毛の1/5程の厚みに、20種類の層、そして100もの化合物が凝縮されています。写真フィルムメーカーではコダックが巨人として有名でしたが、世界でこれだけのものを作れる技術力がある企業は限られていたのです。

T:そうだったのですね。

神様:ところが写真フィルムは、その後のデジタル化の波によって、2005年位から前年比20%〜30%減という急激で世界的な需要の減少に見舞われます。

T:まさに『進化』しないと生き残れない土壇場だったわけですね。

神様:この前後の時期に、自分たちの強みが『写真フィルム』ではなく、『フィルム技術』だと認識を強くしたのでしょう。社名も2006年に『富士写真フイルム』から『富士フイルム』に変更されました。そして、写真フィルムの開発・製造を通じて獲得した化合物の合成技術や薄膜の形成や加工技術といった技術的な強みを様々な分野に応用・展開を加速したのです。

T:機能性化粧品開発の契機は、 そもそも写真フィルムの原料が、肌の弾力感を維持する効能を持つコラーゲンだったからと聞いたことがあります。

神様:フィルムの抗酸化技術や、成分浸透のためのナノテクノロジー等の技術的強みも活用されています。いずれにしても、富士フイルムは自社の技術力という『強み』を自覚し、活かすことによって『進化』したわけです。これが第2のポイントです。

T:第3のポイントが早くお聞きしたいです(笑)。

神様:まずは、自分で考えてみましょう。これまでのソニーや富士フイルムの事例の話の中にもヒントがありますよ。

(この項つづく。次回2/7掲載予定)

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