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第87話 会社の『進化』を見極める(その2)

2018.01.24

株の神様の声が聞こえるというTさん。投資の心構えやコツを、時折神様から伝授されています。新たな年のスタートに1年の動きを見通すよりも、もっと長い目で将来を見通してみようと、会社の中長期的な進化について話しています。神様によると進化できる会社を見極めるには3つのポイントがあるそうです。


神様:一つ目のポイントは、創業の精神です。進化に成功した事例として挙がっていたソニーが、東京通信工業という社名から、1958年に「SONY」という、当時にすれば斬新、かつ、電機メーカーを連想させない新社名を選んだのは、なぜだか知っていますか?

T:詳しくは知りませんが、常に新しいことにチャレンジしようという当時の経営者の意思の表れかと思いますが…

神様:そうですね、「電気製品にとどまらず、開拓者精神を発揮して新しい分野にも挑戦し、世界に通用する企業グループになっていこう」という創業時の経営者、井深大さん、盛田昭夫さんら経営陣の思いを込めたものだそうです。

T:だから生命保険や銀行など金融分野にも進出するという経営判断になるわけですね。

神様:1981年、現在のソニー生命の開業式で盛田昭夫さんは、社員を前に「日本には非常に歴史の長い保険会社がたくさんあります。そういった会社の「社風」をそのまま持ってきて『保険会社というのはこういうものだ!』と、いうようになっては、私の希望はつぶれてしまいます。我々としては、やはりここに新しい、本当に日本に今までなかったような保険会社を創りあげたい、また、創ってほしいというのが私のお願いであります」と語ったそうです。

T:「ひとのやらないことに挑戦し、社会に貢献する」という盛田昭夫さんの思いが感じられますね。

神様:戦後に創業したソニーは、大手電機メーカーと比べると実績や資金力に乏しかったため、あえて他社がやらない分野をいち早く手掛けて、差別化する戦略をとったという背景もあります。

T:日本初のトランジスタラジオから始まり、トリニトロンカラーテレビやウォークマン、ハンディカムなどユニークな電機製品を次々と生み出しただけでなく、輸入雑貨の販売を行うソニー・プラザ、高級フレンチ・レストランのマキシム・ド・パリもソニーが展開した事業なんですよね。はたから見るとさすがに脈絡を感じられない多角化もあるような気がしますが。

神様:ソニーの場合は、「他社がやらない分野」の一つに「海外展開」も含まれており、いち早く電機製品の輸出や海外生産などにも乗り出しました。その流れの中で「海外の新しいもの・素晴らしいものを日本に紹介」というビジネスもあり得たのでしょうね。

T:なるほど。

神様:また、「われわれは、ハードウエアならぬ、潤いのある人間生活をめざした『ハートウエア』を提供します」と、モノづくりだけにこだわらない多種多様の業務内容を共通化するコンセプトを生み出したそうですよ。これが、開拓者精神を失うことなく多業種へのチャレンジを続けてきたベースになったように思われます。

T:多角化して進化に成功する企業かどうかを見極めるポイントの一つは、創業の精神に沿ったものか、創業の精神自体を進化させているか、ということなのですね。

神様:その通りです。加えて、創業の精神が社会や顧客の利益にかなったものか、創業の精神に対して創業時以降の経営者がどれだけ真剣か、投資する側としては掘り下げて観察・分析することの大切さを、ソニーの例は物語っています。また、そのために業績の数字だけでなく様々な場面の経営者の言動も『進化できる企業か』を見極める参考となることがわかります。

T:ところで、創業の精神によっては多角化ではなく、一つの分野にこだわって進化する例もありますよね。

神様:鋭いご指摘ですね。その点に関しては、『進化できる企業か』を見極める第2のポイントにも関わってきます。あなたは、第2のポイントは何だと思いますか?

(この項つづく。次回1/31掲載予定)

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