兜のささやき兜のささやき

第100話 味と投資(その1)

2018.04.25

株の神様の声が聞こえるというTさんは、眩しい新緑を眺め、タケノコご飯を食べながら神様と投資談義に花を咲かせています。


T:このタケノコご飯、とても美味しいですね。タケノコのシャキシャキ感はもちろんですが、ちょっとした苦味と出汁のうま味、醤油の塩味、みりんの甘味が混然一体となって、シンプルな料理だけど複雑な味が楽しめます。

神様:「五基本味」の全ての要素が感じられるから、美味しく感じるのでしょう。「五基本味」はご存知ですよね?

T:「苦味」「うま味」「甘味」「塩味」、それに「酸味」ですね。

神様:その通りです。ところで、それぞれ、投資の教訓にもなりますよ。

T:えっ?どういうことでしょう?

神様:例えば「苦味」。「苦味」を「おいしさ」と感じるには時間がかかります。「苦味」の多くは、本来、毒物である可能性を示唆するシグナルです。小さい子供など、苦く感じると本能的に吐き出してしまう。人間の舌には「苦味」の受容体が豊富にあるそうですが、「苦味」の摂取の回数が増える、つまり食べる経験が増えて、成長とともにおいしく感じるようになるということです。

T:確かに、ピーマン、ゴーヤ、コーヒーなど「苦味」が含まれるものは、自分も子供の頃は苦手で、だんだんと好きになりました。ビールも最初は、この苦いものがなんで毎日のように飲まれるのだろうと思いましたが、今では、仕事帰りに飲む一杯のビールのホップのほろ苦さが、何より疲れを癒してくれます。
ただ、それと投資とどういう関係があるのでしょう?

神様:例えば失敗はほろ苦いでしょう。その失敗の経験を重ねて、経営の苦味を知っている企業は大人に成長した企業で、大抵の逆境は乗り越えられる能力を持つ継続的な投資対象と見なせるかもしれません。逆に、失敗経験がなく、苦味を知らずに大きく成長した企業は、どこかで大きな落とし穴があるかもしれないことも織り込んで投資した方がよい場合があるかもしれません。

T:なるほど。ただ、そうすると失敗を知らない企業には投資を控えた方が良いことになりますか?

神様:そうとも限りません。経営者が「良薬は口に苦し」という言葉をよく理解している人ならば、大きな落とし穴には嵌らない確率が高いでしょう。

T:なるほど!

神様:新興企業で失敗も経験せずに急成長した企業の経営者は、天狗になって周囲が本人のためを思って意見することに耳を貸さないタイプも多いでしょう。一方で、耳の痛いアドバイスも「良薬は口に苦し」と謙虚に受け入れられるタイプもいるでしょう。あなたなら、どちらのタイプに投資しますか?

T:もちろん、後者です。

神様:「苦味」を含む植物成分の代表的なものにポリフェノールがあります。ポリフェノールは抗酸化、老化防止、血流を促進する作用があります。「苦味」を知る経営者がいる企業は、老化せずに常に新陳代謝し、継続的に成功する確率が高いと推察できるでしょう。

T:面白いですね!失敗経験のある経営者やそれがなくとも周囲の意見をよく聴く経営者がいる企業を探すと良い投資対象に出会うということですね。確かに「苦味」が投資の教訓になりますね。

神様:「塩味」も似たことが言えますよ。他の食味が食品に含まれる化学成分が味覚を刺激することによって生じる化学的な味わいであるのに対し、「塩味」は痛覚や温度感覚を刺激する化学物質によって引き起こされる物理的刺激です。「塩味」は「痛み」なわけですね。

T:つまり、「痛み」を知る企業や経営者を探すと良い投資対象になるかもしれないということですね。では、「うま味」はいかがでしょう?

(この項つづく。次回5/2掲載予定)

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