兜のささやき兜のささやき

第107話 国際貿易と投資

2018.06.13

株の神様から投資の極意を教えてもらっているTさんは、そのエッセンスを、奥様A子さん、高校生の娘Y、中学生の息子Sにも伝えています。お金の話は将来的に大切でありながら、学校ではなかなか教わらず、また時事に合わせて動きのあるものなので、家族みなが興味を持つようになりました。季節の話題も投資の話につながるようです。


A子:今年の夏は暑くなりそうね。旅行に行くなら、そろそろ予約した方がいいわよね。

S:夏、といえば、やっぱり海に行きたいな!

A子:いいわね!パパ、投資で儲けているんだから(笑)、久しぶりに海外か、日本なら沖縄とか!

Y:私も海行きたい!ただ部活があるから、夏休みも長くは休めないので、あまり遠いところは行けないかも…

T:海はパパも行きたいな。ただ、海外まで行かなくても日本にもたくさん、きれいな海はあるよ。環境省が、「美しい」、「清らか」、「安らげる」、「優しい」、「豊か」という水辺に係る新たな評価軸に基づいて、全国100カ所の水浴場を、「快水浴場(かいすいよくじょう)百選」として選定している。

Y:沖縄や九州まで行かなくても本州にも綺麗なビーチがあるの?

T:そうだね、例えば、和歌山県の南紀白浜、白良浜海水浴場は遠浅の浜で、美しい白砂ときらきら光る青い海で知られ、2000年にハワイのワイキキビーチと友好姉妹浜になったんだ。日本のワイキキビーチとも言われているそうだよ。

A子:ママも行ったことないけど、旅番組でよく紹介されるわね。テレビドラマの撮影でも、ハワイという設定でロケ地に使われたそうよ。

T:白浜には面白い話がある。白良浜周辺では、観光や宅地等の開発が進み、河川からの砂の供給量が減ってしまい、砂浜がやせてきてしまったんだ。そこで、白い砂浜を守るため、1989年から砂浜に砂を足す養浜事業を手掛けた。国内の各地から白良浜にあう砂を探すもなかなか見つからず、海外に目を向けた調査で、オーストラリアのパースの砂と相性がいいことが判明し、その後12年間で約14万トンの砂を運んだそうだ。砂が流出しないように突堤をつくったり、風で砂を飛ばされないようネットを設置したりしているんだって。日本の観光地を守るため、意外なところで「輸入品」が使われているんだよ。

Y:日本の砂浜を守るためにオーストラリアから輸入されたなんてびっくり!地理の授業でも習わないわ。

A子:オーストラリアとの貿易と言えば、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)11という言葉を聞くけど、私たちの生活にも色々影響が出るのよね?

T:そうだね。TPPをもともと主導していた米国は、トランプ大統領の判断で離脱してしまったけど、11カ国で2017年に大筋合意し、2018年3月にチリ・サンティエゴで、正式に署名されたんだ。我々の生活への影響で言えば、農林水産物はTPP参加国に対して8割超の品目で関税が撤廃される予定で、一例をあげると、牛肉は現在38.5%の関税がかかっているけど、段階的に引き下げ、協定発効から16年目に9%とする意向なんだよ。

S:牛肉が安くなって、いっぱい食べられるということだね!

T:家庭ではそういうメリットがあるよね。投資の観点から言えば、一般的に、外食・中食産業では輸入品の価格が低下すればコストが下がる。メニュー価格を維持できれば、食材費の低下は業績押し上げに貢献するね。

A子:じゃあ、しばらくは投資対象として外食・中食産業は注目ということね。

T:TPP11の対象商品は農林水産物だけでなく、工業製品にも適用される。日本がTPPに参加する10カ国に輸出する工業製品の関税は、協定発効後の即時撤廃と段階的に引き下げられるものを合わせて全品目の99.9%で撤廃される予定になっている。

Y:輸出が多い自動車産業なんかも、TPPがちゃんと続けば安定が期待できるということよね。

T:一方で、日本は先進国の中では食料自給率が最低水準だからね。TPP11が発効されれば、国内の農業や食品加工業は輸入品と競争しつつ、「和食」への世界的な注目を捉えて海外に打って出ていけるか?が問われるようになる。

A子:私たち消費者も国内の農業や食品を応援し続けることも考えないとね。

T:大貿易圏の出現により、日本の企業、国民の生活にどのような変化が起こるか。そういう観点から、投資を考えてみるのは面白いし、日本の未来のためにもなるよね。

(この項おわり。次回6/20「「いいね!」と言われる投資」を掲載予定)

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