第108話 「いいね!」と言われる投資 (その1)
株の神様の声が聞こえるというTさんは、紫陽花を眺め、鮎を食べながら神様と投資談義に花を咲かせています。
T:神様もSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を使うのですか?
神様:もちろんですよ。使ってみないと、それらを運営している会社が成長するか、投資に値するサービスかわからないですからね。
T:そうなのですね!今、世界最大のSNSであるFacebook(フェイスブック)が曲がり角に来ているようですね。
神様:今年4月に開催された、米国下院エネルギー・商業委員会の公聴会では、FacebookのCEOであるマーク・ザッカーバーグ氏が、50名以上の議員たちからFacebookのプライバシーポリシーやビジネスモデル、不法薬物の売買といった件で厳しい質問を浴びせられましたね。
T:いつもはTシャツ姿の似合う人が、スーツ姿で証言台に立ち、神妙に答弁する姿が印象的でした。
神様:若年層を中心に人気を誇るFacebookですが、英国の政治コンサルティング会社により不正利用されたとみられる個人情報が、米国居住者8,700万人分に上ると発表しました。
T:米国紙のウォール・ストリート・ジャーナルによりますと、過去にはFacebook利用者4億2,000万人の個人情報が流出したこともあるとのことです。
神様:より深刻な問題は、利用者が知らないうちに自分の情報を集められ、売買の対象となり、ビジネスや選挙運動に利用されている点と言われています。
T:米国には事実上、デジタル空間にあふれる個人情報の売買を規制する法律がないことが、根本的な課題と言えそうですよね。

神様:インターネットサイト、アプリケーション(もしくはアプリ)のビジネスモデルは、その多くが広告を基本とします。すなわち、魅力のあるコンテンツ、サービスを無償に近い形で提供することでユーザーを集め、媒体としての力を付けて広告掲載の場とし、クライアントを募るというものです。
T:その広告も、広告を打つべき相手=ターゲットが明確であれば、効果は大きくなりますよね。極端な話、女性に男性用の広告を打っても意味がありません。22歳前後の男性で、大学生、そうした人達相手に秋ごろにリクルートスーツ一式の広告を打てば効果は抜群です。
神様:インターネット上の検索内容やウェブサイト閲覧履歴、オンラインショッピング購入実績などの情報は、それ自身が商品になり得ます。
T:Facebookも利用者の個人情報を収益源にしている面が問題視されています。神様は、こういう企業に投資するのは、やはり慎重なお考えですか?
神様:そうとも限りませんよ。
T:(予想と違う答えにちょっと驚いて)そうなんですね!投資するケースもありうると。
神様:勝手に自分の情報を使われるといえばいい気はしませんが、便利なサイトやアプリを無料で使える対価ともいえます。
T:確かにそうですが…
神様:もちろん、運用側の明確な姿勢と倫理観は求められます。一方で、使う側もある種の覚悟が必要とされるでしょう。今後はこの面での両者の認識を強化するような制度が整備されるかもしれません。そのような潮流をしっかり捉えて、ビジネスを強化する企業であれば投資に値すると思いますよ。
(この項つづく。次回6/27掲載予定)
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