第113話 ハードとソフトどっちに投資?
株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、猛暑の都心を離れ、古都鎌倉のお寺で、竹の庭を眺め、会席料理を頂き、冷茶で涼みながら、ゆるりと雑談しています。
T:こちらの料理、味はもちろんですが、それを彩る器が素晴らしいですね。
神様:書画や陶芸など様々な分野での巨人として知られ、美食家としても高名な北大路魯山人は、「食器は料理のきもの」と言いました。まさに素敵な「きもの」ですね。
T:お茶も似ていますよね。お茶の味以上に、器や茶室、さらには庭などに目を奪われます。
神様:ちょっと話が飛びますが、コンピュータのハードウェアとソフトウェアの関係にも似ているかもしれませんよ。
T:えっ、どういうことですか?
神様:北大路魯山人流に言えば、「ハードウェアはソフトウェアのきもの」といったところでしょうか。広義では、ハードウェアは機械や工場などの設備や道具などであり、コンピュータで言えば目に見える機器そのものです。
T:一方、ソフトウェアはコンピュータで言えば、様々なプログラムやアプリケーションですよね。
神様:投資で考えると、コンピュータで言えば、当初はハードウェア、例えばパソコン・メーカーの成長が注目されましたが、今ではソフトウェア、例えば便利で多様なアプリが重要と考えられ、開発に取り組む企業が広く注目されています。
T:ハードウェアの見た目やデザイン等はあくまで「きもの」であり、中身の機能が重要ということですね。

神様:そうです。自動車業界でも同様な動きが見られます。様々な分野で、後付で組み込まれるエンベデッド(組込み)ソフトウェアの重要性が増していますが、特に自動車は今や電子機器のかたまりです。
T:「走るコンピュータ」と言われたりしていますね。
神様:しかも自動車の場合、「ある特定の用途に特化している」システムが多数導入されていることが特徴です。
T:確かに。最新の車の展示会等に行くと、車間距離を一定に保つ機能、横滑りを防止する機能、急ブレーキでもふらつかない機能等様々な機能に驚きます。それを各々制御する専用のソフトウェアが組み込まれているということですよね。
神様:投資の観点から見ると、これがどんな意味を持つかわかりますか?
T:そうですね…様々なソフト開発を手がける会社があり、成長を期待できる会社も多いということでしょうか?
神様:その通りです!完成車メーカーが、コネクテッドカー(インターネットへの常時接続機能を具備した自動車)や自動運転車などの未来を見据える中で、組み込みソフトを手掛けるソフトウェア会社の将来性も注目されています。
T:車も見た目のデザインや耐久性等ハードウェアに目が行きがちですが、その中身の動きにも注目すると投資のチャンスが広がるということですね。
神様:「仏作って魂入れず」という言葉がありますが、エンベデッドソフトウェアはまさしく、ハードウェアに様々な機能という魂を刻み込んでいるようです。入れ物と中身、料理やお茶と同様、どちらもトータルで広く深く見て行く視点が重要ですね。
Tさんは、家に戻ったら早速、自動車メーカーだけでなく、関連のソフトウェア開発を手がける企業も様々な観点から調べてみようと思いました。
(この項おわり。次回8/1「熱い!投資(その1)」を掲載予定)
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