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第13話 長期的に成長する企業を見極めるには?(その3)

2016.08.24

兜町の株の神様が、長期的に成長する企業を見極めるには、経営者が重要であり、具体的には、創業社長とそれを支えるナンバー2のコンビ、そしてそれぞれ補完しあっている強みに着目するとよいとTさんにささやいています。ただ、もう一つ大事な視点があるようです。引き続き、そのささやきに耳を傾けましょう。


神様:創業社長が一代で大きく成長させた企業に共通する、もう一つの課題は後継者の育成です。

T:(大きくうなずきながら)確かに、最近も大きく報道されている企業がいくつもありますね。

神様:そして、これは良きナンバー2の確保以上に難しい課題なのですよ。あなたが例に挙げた松下幸之助さんでさえ、ある意味、上手には後継者を作れませんでした。一方、米国で優良企業であり続けるGE(ゼネラル・エレクトリック)は、後継者を選ぶ仕組みこそが本質的な成長のエンジンで、相当な時間とコストを掛けて後継者選びをしています。

T:名経営者と言われるには「立つ鳥あとを濁さず」に加えて、自分より優れた後継者を指名しなければならないということなのですね。

神様:そう。そして、実際には優秀な経営者であるが故に、自分を尺度に考えて、誰もが物足りないと却下したり、あるいはエゴがあるために、自分に従順な人以外を外してしまったりと簡単ではないのです。結果、“偉人伝残って企業残らず”となりかねない。長期保有が秘訣と言いましたが、そのような兆しが見られたなら投資する側とすれば売りを考え始めなければなりません。

T: よく、巷では同族経営の会社は3代で潰れるとも言われます。1代目である創業者が力を持って、2代目が1代目には劣るものの1代目の背中を見て育ったことから創業期の1代目の苦労を見ながら経営を学んできたが、3代目は苦労知らずで力がない場合には、そこで衰退してしまう…。

神様:その場合は、あなたの言うように、プロの経営者を招いて企業経営に当った方が、合理的な判断が出来ることになるのかもしれませんね。

T:(ちょっと嬉しそうに)そうですね。

神様:ただ重要なことは、子供や親戚に経営を継がせること自体が即、悪いわけではありません。企業が苦境に陥ったときに、創業家でなくては現在の苦境を乗り切るための抜本的な経営改革ができないという理由で創業家から社長が選出されるケースも一方であります。

T:あっ、確かに、そうですね。

神様:このようなケースでは、創業家の中でも優秀な人材を選び、経営に早期から参画させ、様々な経験を意図的に積ませていることが多いのです。実は、先のGEのように後継者を育て、選ぶ仕組みがあるのです。つまり、創業社長が成長させた企業に投資を続けるか否かの判断は、その創業者が子供を継がせるか、あるいはプロ経営者に継がせるかという表面的な視点だけではなく、優れた経営者を輩出し続ける仕組みを作れているかを見極めることが重要になります。

T:(感嘆した表情で)なるほど。

神様:大航海時代のように航海ごとに作られる会社であれば、一航海が終わった時点で収支を精算すれば終わりで、船長である経営者も、自分の航海だけを考えればよかったわけですが、現代の企業はゴーイング・コンサーン(going concern)が前提であり、次の代へとリレーのようにつないでいくことが重要となります。このため、創業社長であれ、プロ経営者であれ、事業だけでなく次の経営リーダーについて明確なビジョンを持って経営に当っているかを、投資する側は分析し、判断する必要があるのです。

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