第159話 自動運転と産業社会の未来

2019.06.12

株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は紫陽花(あじさい)の咲く庭のある甘味処で投資談義です。


神様:CASE」と呼ばれるキーワードをご存知ですか?

T:はい、Connected、Autonomous、Shared&Service、Electricの略で、自動運転を軸とした自動車の技術変革を表す用語として完成車メーカーの間などで使われています。

神様:さすが、その通りです。自動運転システムの使用に関する規定を新設した改正道路交通法が、5月28日に衆院本会議で可決、成立しました。条件付きで運転に関わる全ての操作をシステムに任せる「レベル3」の実用化に向けた法整備が進み、2020年中に施行される予定です。

T:技術面では既に「レベル3」を達成した完成車メーカーが現れ始めていますよね。

神様:2020年以降は法整備を後押しに、実車投入が加速すると見込まれますが、私は「CASE」は自動車のあり方を変えるだけでなく、新たな産業革命とも言えるのではないかと考えています。

T:(慎重な言い回しが多い神様にしては大げさだなと思いつつ)そうなのですね!最近の事故のニュースなどを見て、高齢者の運転や、歩行者、特に子供の安全確保の観点から不安を感じる機会が多く、自動運転により安全性が高まるといいなとは思っていましたが、産業革命のような大きな変化にまでつながるんですね。

神様:「CASE」の中でも、Connected「つながる」とAutonomous「自動運転」は密接な関連がありますが、これらの新たな技術要素が産業の裾野を広げると見込まれるからです。

T:なるほど。

神様:例えば、自動運転を軸として、新たな電子部品需要を牽引することが期待されています。電子情報技術産業協会(JEITA)が2018年12月18日に発表した調査では、車載用電子制御装置(ECU)の世界生産額が2030年には17.8兆円と、2017年比で約2倍の拡大と予測、そのうち、CASEに必要とされる電子デバイスは2030年に同約4倍の13.3兆円と予測されています。

T:飛躍的な拡大で、かつ市場規模が大きいですね。

神様:自動車というと昔は大手の組み立てメーカーと中小の部品メーカーというイメージがありましたが、現在では、エレクトロニクス産業の大手メーカーが、先進運転支援システム(ADAS)に向けた高性能車載カメラや高解像度の画像センサ等で先端的な開発や提携等によるシェア拡大でしのぎを削っています。

T:自動車技術の長期的な進化だけでなく、業界を超えた市場構造の変革が起きているという感じですね、

神様:そうです。通信大手のグループ会社が、自動車用半導体の開発等、次世代移動通信(5G)の本格普及に向けCASE関連ビジネスに注力する動きもありますし、もちろん完成車メーカーや大手自動車部品メーカーもセンサ、カメラ、ステアリングの制御ソフトを搭載した実走実験を行ったり、様々な部品の開発に取り組んでいます。誰がどんな技術で主導権を握り、新たな産業社会の地図が描かれていくのか、注目です。

Tさんは、ドライバーの目線で、高齢者の安全運転や歩行者の安全確保といった観点から自動運転の未来に期待するだけでなく、投資家の目線で、家族も一緒に継続的に、この業界を超えた変革を注視していこうと思いました。

(この項終わり。次回6/19「リテールテックが小売業の人手不足を解消」を掲載予定)

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