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第174話 訪日外国人「モノ消費」の変化 急拡大する「越境EC」に注目

2019.09.25

株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は皇居近くのホテルのロビーで、コーヒーを飲みながらの投資談義となりました。


神様:前々回は、ラグビーワールドカップでは訪日外国人観光客の「コト消費」に注目しましょう、という話 (第172話 経済効果4,372億円 ラグビーW杯は「コト消費」に注目) をしました。

T:はい。ワールドカップ期間中は、「買い物」よりも「体験」を重視するという、最近の訪日外国人の消費動向を確認しようと思っています。

神様:今日は「モノ消費」について、もう少し触れてみたいと思います。

T:どういうことでしょうか?

神様:「モノ消費」自体も変化しています。訪日外国人の「モノ消費」といえば、これまでどのようなものだったでしょうか?

T:中国からの観光客による「爆買い」が象徴的だったと思いますが、近年ではそれが影を潜めています。

神様:「コト消費」もその要因でしょうが、もうひとつの要因はご存知ですか?

T:なるほど、わかりました。「越境EC(電子商取引)」ですね。一時期、報道では「爆買い」から「爆輸入」へ、というフレーズも見られました。

神様:さすが、よくご存知ですね。世界では、国境に関係なく買い物ができる「越境EC」が拡大を続けています。経済産業省の調査によれば、2014年には2,000億ドルを超える市場規模だったものが、2017年には5,300億ドルと推計されています。今後も20%を超えるペースで拡大を続けるとみられ、2020年には9,940億ドルに達すると見込まれています。

T:急拡大ですね。

神様:その中でも大きく拡大すると見られている地域は、アジア太平洋地域、特に中国です。中国では2019年1月1日に、海外で購入した商品を転売する事業者を対象とした中国電子商取引法が施行されました。中国人による日本製品の中国国内での転売を取り締まるなど、中国国内市場の健全化を図る内容です。

T:爆買いしていた中国人にとっては、これまでのビジネスモデルの変更を迫られたわけですね。そしてその代わりが「爆輸入」、つまり越境ECとして、インターネット上で日本製品を「輸入」するようになった、ということですね。

神様:はい。今後もその流れが続くと見られています。経済産業省によると、中国の購入先別越境EC市場規模は、日本と米国で2018年で3兆円超、2020年には4兆円を超えると推計されています。日本だけで見ても、米国と同等規模で成長を続けていくと見込まれています。

T:越境ECに取り組む日本企業にとっては、大きなチャンスですね。

神様:例えば、国内の化粧品メーカーでは、日本商品に特化した中国向けの越境ECアプリに自社製品を出すなど、独自の戦略を図っています。また、こういった取り組みをサポートするプラットフォームやサービスを持つEC事業者にとっても、良い事業機会となっています。

T:こうして見ると、消費動向の変化や購入方法の変化など、訪日外国人をめぐる市場の変化についていくのは大変ですね。グローバルな視点が大切ですね。

神様:そうですね。そして、世界であろうと国内であろうと、市場の変化を「良い機会」と捉え、対応していくことができる企業は良い企業です。変化が訪れたときは、投資家にとってもそのような企業を見出す良い機会となりますから、大切なタイミングを逃さず、良い企業を見出したいですね。

Tさんは、神様の話から訪日外国人をめぐる市場の変化の面白さを感じ、大きな学びを得たと思いました。同時に、市場の変化にしっかり対応している企業とはどんな企業なのか、じっくり考えていきたいと思いました。

(この項終わり。次回10/2「「官」から「民」へ 宇宙ビジネスが面白い」掲載予定)

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