第238話 環境対策は経済成長の鍵 「循環型社会」の実現に必要なこと
株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、海の見えるカフェで投資談義を行っています。
T:今年も国会が始まりました。菅政権にとっては勝負の1年ですね。
神様:そうですね。国会の冒頭で首相が行う施政方針演説等は、今後の日本の方向性を示すものでもあります。注意深く聴くことで投資のヒントも見えてくるかもしれませんね。
T:今回の施政方針演説では、「グリーン社会の実現」と「デジタル改革」が成長の原動力であると述べていましたね。いずれも我々がこれまで触れてきたことですから、新しいことではありませんが、どこまで実現させられるか注目ですね。
神様:昨今、環境対策は経済の制約ではなく、成長を生み出す鍵となっています。脱炭素化や廃プラスチック問題など、世界的に環境への関心が高まっており、この流れは今後さらに強くなっていくでしょう。Tさんは「循環型社会」というとどんなイメージがありますか?
T:平たく言うと、ごみのリサイクルを進めて資源の再利用を増やすこと、ですか?
神様:おおむねその通りです。環境省では、循環型社会を「天然資源の消費の抑制を図り、もって環境負荷の低減を図る」社会としています。そこには、ごみのリサイクルはもちろん、天然資源の消費を減らすこと、埋立てとなる最終処分を減らすことも含まれています。
T:確かに、環境への負荷を減らすためには、より総合的に考えなければいけませんね。リサイクル量が増えても、使っている天然資源の量が増えていたら意味がありませんし、ごみの量が増え、最終処分の量が増えても問題ですよね。
神様:環境省の「環境・循環型社会・生物多様性白書」では、「物質フロー(物の流れ)」という図を用いて、日本における資源の採取・消費・廃棄の現状を表しています。2017年度の日本の物質フローを見ると、循環利用量は2.37億トンで全体の14.9%、廃棄物などの発生は5.48億トン、最終処分は1400万トンとなっています。

T:天然資源の利用に比べると、循環利用はまだまだ少ないのでしょうね。循環利用を増やすことが天然資源の利用を抑えるためにも大切ですね。
神様:政府の「第四次循環型社会形成推進基本計画」では、2025年度での目標値を定めています。資源生産性(GDP/天然資源等投入量)、入口側の循環利用率(循環利用量/(循環利用量+天然資源等投入量))、出口側の循環利用率(循環利用量/廃棄物等発生量)、そして最終処分量(廃棄物の埋立量)という4つの指標を立てています。資源生産性、入口・出口側の循環利用率は上昇を目指し、最終処分量は減少を目指すものですが、どういうことかわかりますか?

T:なかなか難しい指標ですね。調べてみると、資源生産性というのは、天然資源1トンあたりにおけるGDP、つまりモノやサービスを生産した付加価値(金額)を表すようです。入口側の循環利用率は、モノの生産における物資の投入量のうち循環利用がどの程度占めているかの割合、出口側の循環利用率は、廃棄物等の発生量のうち循環利用がどの程度占めているかの割合を表すようですね。最終処分量は、循環利用されずに埋め立てられる廃棄物の量ですね。
神様:その通りです。Tさんのおっしゃる通り、循環型社会を実現させるためには、天然資源等の投入量を減らしつつ、循環利用量を増やし、廃棄物の発生量、そして埋め立てとなる最終処分量を減らすことが求められます。近年では、これらの4つの指標はどれも目標に対して伸び悩んでいる状況なのです。
T:あと5年で結果を出すためには、ここ数年が大切ですね。目標に向けて、国だけでなく民間企業の協力が求められますね。
神様:民間企業では、特に産業廃棄物処理業者やリサイクル業者の活用に期待が寄せられています。今後の官民の動向に注目しましょう。
(この項終わり。次回2/3「コロナ禍で続く巣ごもり消費 カップ麺・袋麺が高い人気」掲載予定)
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