第291話 脱炭素で注目「CCUS」とは?期待高まるカーボン・リサイクル
株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、公園で散歩をしながら投資談義を行っています。
T:北京五輪が終わりましたね。日本は合計で18個のメダルを獲得しましたが、これは過去最多だそうです。
神様:それぞれの競技で日本の選手が活躍する姿はとても素敵でしたね。2030年の開催地として札幌市が招致活動を行っていますが、日本での開催となれば更に楽しみになります。 一方で、コロナ禍の第6波はピークを越えたとみられています。今後の株式市場の動向に注目しましょう。
T:コロナ禍の終わりのない戦いから早く解放されることを願います。
神様:今日は脱炭素のお話をしましょう。以前( 第288話 高い成長を期待「脱炭素」市場に熱い視線 )、CO2をうまく切り離して格納し、有効に活用できれば地球温暖化問題の解決に大きく貢献するとお話しました。その中で、地中に貯蓄したCO2を再利用する技術がありましたが、覚えていますか?
T:はい。「CCUS」ですね。「Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage」の略で、カーボン・リサイクルの技術と言えます。
神様:その通りです。そもそもカーボン・ニュートラルとは、CO2をはじめとする温室効果ガスの「排出量」から植林、森林管理などによる「吸収量」を差し引き、合計を実質的にゼロにすることを意味します。そして現在は、CO2の排出を減らす取り組みが主流となっています。
T:そこで、カーボン・リサイクルの観点で考え、CO2を炭素資源として捉えて再利用を進める考え方が大切になっているのですよね。
神様:はい。具体的には、ポリカーボネート等の樹脂、エタノールやメタン等の燃料、コンクリート製品等の鉱物を抽出・製造する際に、CO2を利用することが考えられています。この分野は急速に伸びており、2021年のCCUSテック企業の資金調達額を見ると、前年比で3倍の11億ドルの見込みです。今後はさらに注目度が増すでしょう。
T:調達額と件数の予測値をあわせると2020年以前とは別次元の伸びですね。

神様:2020年10月13日に開催された「第2回カーボン・リサイクル産学官国際会議2020」では、日本と米国は技術情報の共有や専門家の相互派遣、テストサンプルの交換などで合意し、協力覚書を締結しました。技術力の向上が期待されます。しかし課題ももちろんあります。
T:課題は何でしょうか?
神様:CCUSの実現はコスト面や技術面においてまだまだ未熟であり、実用化されるまでには時間が必要であることです。現在日本の各企業でCO2再利用の技術開発が進んでいます。政府のグリーンイノベーション基金を活用したり、実証実験で成果を上げるなど、日々研究が進んでいるところです。
T:革新的な技術には地道な研究・開発が必要ですから、日々進歩していくほかありませんね。
神様:日本は世界の国別CO2排出量で見ると、中国、米国、EU28か国、インド、ロシアに次ぐ6位です。排出シェアでは世界の3.2%となっています。世界的に見ればCO2排出量は多くありません。しかし、CCUSにおいて日本の技術力を磨き世界に輸出することができれば、世界のCO2活用に貢献することができます。関連各企業においては企業価値を向上させることができるでしょう。CO2の再利用には国を挙げての大きな期待がかかっているのです。

T:CCUS、カーボン・リサイクルの分野で日本が世界をリードできるよう、関連企業の活躍に期待したいと思います。
(この項終わり。次回3/9「海外市場が国内を逆転 「日本アニメ」ブームに期待高まる」掲載予定)
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