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第297話 コロナ禍で歴史的低水準の企業倒産件数 今後の課題とは?

2022.04.13

株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、都内にあるカフェで投資談義を行っています。


神様:さて、新年度、2022年度が始まりました。

T:今年度こそは力強い経済活動を推し進めたいところです。

神様:そう行きたいですが、こんなデータがあります。帝国データバンクによると、2022年4月5日現在、新型コロナウイルスの影響を受けた倒産は全国で累計3133件とのことです。そのうち、業種別では飲食店が圧倒的に多く509件。飲食店、アパレル小売、食品小売などの小売業が900件超と全体の約30%を占めています。この数値をTさんはどう思いますか?

T:コロナ禍において、企業倒産は歴史的な低水準で推移していると言われています。それは、政府によって巨額資金の投入が行われているからですよね。しかし、今後の動向が気になります。

神様:政府は、新型コロナにより売上が落ちるなどの影響を受けている事業者への支援策として、事業規模に応じた給付金を支給しているほか、政府系金融機関による実質無利子・無担保融資を行っています。いわゆる「ゼロゼロ融資」と言われるものですが、現在のところ2022年6月末まで実施される予定です。ゼロゼロ融資の実行額は2021年末に約42兆円に達したとされます。その分、企業の債務は膨らんでいると言えます。

T:まだまだ感染終息の見通しは立っていませんが、一部では返済が始まっていると聞きます。きちんと返済を行っていけるのか心配です。

神様:おっしゃる通り、企業の約3割で返済が始まっています。そして返済の開始と共に、企業の休業や廃業が増加する懸念があります。これまで抑え込まれていた企業倒産が今後増加する可能性はあるかもしれません。そしてこの問題と絡んで、特に中小企業において、もう一つ重要な問題があります。それは何だと思いますか?

T:経営者の後継者の問題ですよね?例えば、老舗飲食店などではコロナ禍で後継者がいないため廃業するケースもありました。飲食店に限らずこのような事例が今後も増加するのではと考えられます。

神様:その通りです。日本では少子高齢化により、経営者の高齢化が進んでいます。2019年時点での経営者の平均年齢は62.2歳と言われています。中小企業基盤整備機構によると、直近の23年間で経営者の年齢のピークは47歳から69歳にシフトしたとされます。経営者の高齢化が進むにつれて企業の休廃業や解散も伸び続けています。今後増加する可能性のある企業の倒産は、コロナ禍によるものだけでなく、経営者の高齢化や後継者の不在によるものも要因としてある、ということです。

T:それを解決するには、事業継承の課題を解決する必要がありますね。

神様:独立行政法人である中小企業基盤整備機構は、日本の中小企業の経営を支援するために2004年に設立されました。事業継承に関する相談や引継ぎの実績は近年増加傾向にあります。今後は官民連携による支援体制の一層の強化が期待されるでしょう。

T:しかし、後継者の育成の問題は多くの時間がかかると聞きます。その辺りはどうなのでしょうか?

神様:その通りです。中小企業基盤整備機構の事業承継・引継ぎ支援センターが実施したアンケートによれば、経営者が60歳代の企業のうち後継者が決まっていない企業が約3割あるとされています。また、後継者候補がいる企業でも約2割の経営者が後継者に話をしていないことも明らかになっています。さらに、後継者の育成には多くの企業が3年以上の時間がかかると答えています。取り組んですぐに解決する問題ではありません。今後事業継承に関するニーズが一層増加することが考えられます。

T:ということは、事業継承を支援する企業の活躍が期待されますね。

神様:おっしゃる通りです。今後は、事業継承や企業再編を支援するコンサルティング業などの企業の活躍が期待できます。事業の買収や適切なノウハウのある企業が事業を継承することで、企業価値が損なわれないだけでなく生産性の向上や技術の伝承にもつながります。それが地域経済の活性化にもつながっていくでしょう。

T:複雑な問題ですが、適切に対応することでチャンスにすることができますね。事業継承は多くの企業にとって2022年度の重要なテーマになりそうです。

(この項終わり。次回4/20「次世代自動車「xEV」急速に普及へ 鍵となる技術とは?」掲載予定)

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