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第315話 旅行は「近場で体験重視」 国内旅行の回復に期待

2022.08.24

株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、夜の海辺で花火大会を見ながら投資談義を行っています。


T:きれいな花火を久々に見た気がします。各地でお祭りも再開され、日常が少しずつ戻ってきていることをひしひしと感じますね。

神様:経済の回復にも期待です。8月15日、4月-6月の実質国内生産(GDP)速報値が発表され、前期比0.5%増、年率換算で2.2%増となり、2四半期ぶりにプラスとなりました。実質GDPの実額は542.1兆円と、新型コロナウイルス流行前である2019年10-12月期の実質GDPを上回り、国内景気の回復感も強まっています。

T:ロシアによるウクライナ侵攻、中国のロックダウン(都市封鎖)、米国の金利引き上げなどの逆風の中で、良かったですね。

神様:行動制限が緩和され、外食や宿泊、娯楽を中心に消費が増加したことが要因です。加えて人手不足に対応したデジタル投資や脱炭素に向けた環境投資も下支えしたと考えられます。しかし物価高など不安要素も多いですから、手放しでは喜べません。

T:確かに、今後も注意深く観察する必要がありますね。

神様:さて今日は、観光について見ていきましょう。観光業界でも、消費者の行動に変化の兆しが見られます。2022年1-3月期の宿泊旅行のひとり1回あたりの旅行支出は、コロナ禍前の2019年1-3月期比で1%減となりました。一方で、日帰り旅行では2019年1-3月期比で7.5%の増加となりました。

T:つまり行動制限がない現在、多くの人が日帰り旅行を楽しんでいるということですか?

神様:そうですね。旅行では交通費をかけて遠出をするよりも、近場で飲食代やレジャー代にお金をかけ、”体験に重きを置いていると推察します。

T:これまでは近場さえも行きにくかったですからね。今は近場でも満足できる気がします。

神様:一方で、海外に宿泊込みで行きたいが、コロナ禍を理由に控えている層も一定数いると考えられます。その場合は比較的近場で宿泊旅行をすませ、その分、宿泊施設にお金をかけるなど、現地での消費に費やしているようです。コロナ禍前と比較した旅行費用のかけ方を見ると、個人旅行の割合が増加し、旅行における交通費の割合が減少しているとの調査結果もあります。

T:なるほど。お金の使い方が変化しているわけですね。今後もその傾向は続くのでしょうか?

神様:政府は、新たな旅行支援策として「全国旅行支援」を実施する予定です。観光庁より6月17日に発表され、本来なら7月に実施される予定でしたが、新型コロナ感染状況の改善が見られず、実施が見送りとなっていました。

T:どのような内容なのですか?

神様:「全国旅行支援」では、全国一律40%の旅行代金の割引率が設定されました。また、鉄道、バス、航空などの交通を利用する旅行商品では1泊当たり8,000円まで、それ以外では5,000円までの割引上限額が設けられています。さらに平日3,000円、休日1,000円分のクーポン券が付与されるとしています。斉藤国土交通大臣は8月15日、内閣改造後初となる記者会見で全国旅行支援の実施について「今後の感染状況を見極めた上で、感染状況の改善が確認できれば、速やかに実施してまいりたい。準備はきちんと進めている」と述べました。今後に期待したいですね。

T:現在、政府の観光施策としては「県民割支援」が8月31日宿泊分まで延長されて実施されています。9月に全国旅行支援が実施されるのか、それとも県民割支援がさらに延長されるのか、感染状況も踏まえて判断されるわけですね。

神様:全国旅行支援が実施されれば、近場の旅行から遠方への旅行へと需要が喚起され、観光業界がさらに盛り上がるきっかけとなります。国内旅行の回復に期待したいところです。

(この項終わり。次回8/31「デジタル変革で需要拡大 「コネクタ市場」に注目」掲載予定)

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