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第318話 脱炭素エネルギーの柱へ 「次世代原子力発電」とは?

2022.09.14

株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、都心にあるホテルのラウンジで投資談義を行っています。


T:日本は台風シーズンを迎えていますが、今夏もこれまで日本各地で豪雨災害に見舞われました。地球温暖化の影響からか、毎年のようにこのような災害が発生するのは怖いですね。

神様:水害や熱波は世界規模で発生しています。地球温暖化の抑制は世界的な課題であり、世界中で脱炭素、カーボンニュートラルを目指しているところです。世界で5番目のCO₂排出国である日本は、再生可能エネルギー(再エネ)の活用拡大などによるエネルギー分野の改革を進めようとしている( 第266話 CO₂排出量 日本は世界で何番目?急がれるエネルギー改革 )ことは、これまでもお話してきましたね。

T:日本のCO₂排出のうち約4割が、発電に伴って排出されているのですよね。

神様:はい。日本の2019年度の温室効果ガス排出量は、85%がエネルギー起源CO₂であり、電力分は36%を占めます。再生可能エネルギーは火力発電などと異なり、発電時にCO₂を排出せず、太陽光などであれば石油などの輸入燃料も必要としません。また、経済成長や電化率の向上などで電力需要は増加する中、政府は省エネを推進しています。

T:まさに、地球温暖化問題はエネルギー問題ですね。しかし一方で、再生可能エネルギーは発電量が不安定で計画発電が難しいというデメリットがありますよね。

神様:さらに、ロシアによるウクライナ侵攻により、現在、世界的にエネルギー事情が変化しています。Tさんは、日本のエネルギー自給率がどのくらいか、ご存知ですか?

T:いいえ。しかし日本には十分な資源がありませんから、自給率は低いのでしょうね。

神様:資源エネルギー庁によると、2019年度の日本のエネルギー自給率は12.1%でした。これは、OECD諸国36か国の中で35番目の自給率です。ちなみに上位のうち1位はノルウェーで816.7%、2位オーストラリアの338.5%、3位カナダで174.5%、4位米国で104.2%と続きます。

T:なんと、下から2番目とは…。豊富な資源を持つ国にはかないません。

神様:エネルギー問題が日本にとっていかに大きな問題であるかがわかります。現在のウクライナ情勢や世界のエネルギー事情の変化は、日本にとって今すぐ対応すべき危機的な問題であるとも言えます。岸田首相は8月24日、首相官邸で行われた「GX実行会議」にて、今年の冬をはじめとした電力需給ひっ迫の問題に対応するため、原子力発電所の再稼働済み10機の稼働確保のほか、新たな安全メカニズムを組み込んだ次世代原子力発電の開発・建設を検討する方針を示しました。今年末にも具体的な結論が出る見通しです。

T:日本は「技術力」で解決していく、ということですね。政府は、原子力発電を再エネと並ぶ有力な脱炭素エネルギーとしています。次世代原子力発電とはどのようなものなのでしょうか?

神様:首相は8月31日に行った記者会見で、次世代原発について説明しています。徹底した省エネや再エネ導入を進め、原発依存度を低減させる方針は変えないことを前提に、次世代革新炉として革新軽水炉、新型モジュール炉、高速炉などの技術研究について議論をしていく、と述べています。これらの次世代原子炉のポイントは、使いやすくて安全な原子炉であることです。今まさに世界的に研究・開発が行われており、実現すればエネルギー分野におけるイノベーションとなるでしょう。日本企業の研究・開発も活発化しています。今後大きく注目される分野となるでしょう。

T:国産エネルギー源で発電できる再生可能エネルギーと、安定供給に優れている原子力発電。この2つを柱として、脱炭素に向けたエネルギー改革を進めていく。これは日本にとって低エネルギー自給率を改善することにもつながる重要な方針となりそうですね。関連する日本企業の活躍に期待したいと思います。

(この項終わり。次回9/21「訪日外国人緩和で観光回復へ 今後の「航空機需要」に注目」掲載予定)

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